環境教育 「緑の旗」運動について

 

はじめに:   

 

私(ケンジ ステファン スズキ)は1990年6月デンマークの商大を卒業し、10月にリサーチ会社を起業しました。リサーチ会社設立直後からデンマークの風力発電の対日輸出に関与する機会を得、今なお風力発電に関する業務を側面から支援しています。デンマークの風力発電事業はデンマークの環境・エネルギー政策から生まれて来ている関係で風力発電に関する資料やデータの収集以外にもデンマークの環境・エネルギー政策が生んだ環境産業についての情報収集に努め今日に至っています。また、1997年6月にデンマークの環境・エネルギー政策について語る研修センター「風のがっこう」を開設し、デンマークの国について語って来ていますが、これらの業務活動を通した中で、デンマークの国を作っている背景には「共生社会に生きる教育」があるということに気付きました。つまり、気候的にも資源的にも恵まれないデンマークにおいて、お互い力を合わせ、より良い生活が出来るための教育をデンマークの人達は受けている、ということに気がついたわけです。

 

デンマークの「緑の旗」運動

 

デンマーク人の満足出来る国作りの基礎に学校教育があると書きましたが、考えてみれば当然のことです。物作りと違い国作りには多くの人達の協力が必要です。そのためには子供の時から教育の場で国作りに関する思考力の訓練を積まなければなりません。それはプロの野球選手になるためには、小学校の時から練習に励まないと成れないように、国づくりに関与するためには小学校の時から社会の形成者としての準備に入る必要があります。それではデンマークの子供達はどのような「勉強」や「活動」をしているのか、デンマークの学童が始めた「エコ・スクール、または緑の旗運動」を例に話を進めて行きたいと思います。我々人類が生息する地球の持続可能な発展に向け、政治がやるべき業務として始まったのが地球の温暖化防止会議であります。産業界が地球温暖化防止への果たす役割として始まったのが、ISOの国際標準規格(International Standard Organization,)であります。

 

そして、19939月、「地球の持続可能な発展に学童としてどのような役割を果たせるか」への活動がエコ・スクール運動であります。この欧州諸国で進められているエコ・スクール活動は学童が自らの行動を起こすことによって、地球の持続可能な発展への協力と理解を深め、その活動を通して得た知識や行動を国作りに繋げるようにしています。 20045EU諸国は25カ国に増えました。この25カ国の殆どの国がエコ・スクール活動に加盟しています。 EU諸国が再生可能エネルギーに力を入れ、2012年までにエネルギー消費量の12%を再生可能エネルギーで賄うという目標を立てています。 エコ・スクールが始って10年経ち、エコ・スクールで学んだ児童は大人になり、今後、欧州諸国の地球の持続可能な発展に重点をおいた政策に影響を与える人達になっていくように思えます。

 

「緑の旗」の運動は、デンマークの環境教育の目標で詠った「環境教育は生態系における人間社会の問題として捉え、環境破壊、資源の分配と利用、人口増加、動植物の根絶問題に対し、熟知した行動力のある市民の教育を目標とする」の「行動力」を具体化したものであります。 

 

緑の旗とは何か

 

1992年リオデイジャネロ会議で提案されたアジェンダ(Agenda21)でのテーマ「地球を考え、地域での行動」が発端となり学童の地球環境保全への役割として、1994921日、環境に負担のかけない学校作りのキャンペーンが始まりました。この運動の目標は、児童が環境とその保全問題に自ら取り組むことで、「自然との触れ合いによる喜びと自然を守る知恵を身につけることが出来る」、としています。この運動の成果を評して配布される旗が「緑の旗」ですが、「緑の旗」運動の先頭を切ったのがデンマークの学校です。デンマークが始めた「緑の旗」運動がその後イギリス、オランダ、フランス、スペイン等各国に広がり、2004現在、エコ・スクールの加盟国は主に欧州諸国で32カ国あり欧州諸国以外では南アフリカが加盟しています。 エコ・スクールとして登録されている学校数は約12,0000校で、その中で、環境保全認可校のシンボルとして「緑の旗」を取得した学校数は約4,000校に達しています。デンマークにおけう2004年現在、「緑の旗」の登録校は210校で緑の旗を取得した学校の累積は188校に達しています。  

 

エコ・スクール参加加盟国では、共通の目的・目標を守るため、国際規定を適用し、その条件をクリアーした場合において「緑の旗」が配給される仕組みになっています。つまり「緑の旗」は加盟国のおける国際旗ということです。エコ・スクール加盟国は欧州連合における環境教育プロジェクトに加盟し、学校における緑の旗運動を推進し認可する機関はデンマークの場合は野外活動審議会〔Friluftrådet)(仮訳)となっています。この環境教育プロジェクトは「エコ・スクール」という国際名称が付き、環境教員組合や環境教育協会(Foundation for Environmental Education)と連携し、守るべき共通のルールがあります。 環境保全学校を目指し「地域での行動」に入るためにはその共通のルールを守ることになっていますがそのルールは次の通りです。

 

「緑の旗」取得に必要な国際共通規定

 

1)   教員・生徒・管理責任者・技術スタッフから構成された環境委員会(Miljøråd)を設置すること。

 

2)  学校の環境保全に向けた行動計画を作成すること。

 

3)  児童による学校における環境規則を作成すること。

 

4)  全校生徒の最低15%の児童がプロジェクトに参加すること。

 

5)  「緑の旗」を保持し維持する場合は毎年「テーマ」を選び活動を続行すること。

 

 

 

1)環境委員会の役割について:

 

特に国際基準の中で、重視される点は環境委員会の設立です。環境委員会の役割は学校内における代表者の選任確認、児童が選択したテーマとその行動計画が守られているかを確認し、環境行動計画と他の科目との関連性についても確認するためです。そのためには環境委員会でこの活動の目的や実行にむけた行動を明確にするために規約を作る必要があります。この規約には、環境委員会は何なのか、どういう目的で誰が設立したのか、どのような権限があるのか、環境委員会と学校における他の委員会との関係はどうなっているのか、環境委員会の解散はどのようにして出来るかなどを決めた規約を作って置く必要があります。

 

2)環境行動計画の作成について:

 

作業の進展状態を見るために、プロジェクトの環境行動計画は、大事な道具であります。何故ならば、この環境行動計画を通し、その学校における将来の環境活動への方向性が見えるためです。行動計画の中で取り上げることは、環境活動のテーマの選択をし、それがどのような内容の活動になっているか、授業との関係はどうなっているか、どのような行動を何時から始め、初年度の活動は何か、2年目3年目では何をやるのか、など具体的な行動を表すための計画となっているためです。

 

3)環境規則の作成について:

 

毎年テーマに合わせ学童が環境保全に向けて自分達は何をするのか、声明文を発表しますが、この声明文は学校における新たな規則として使われるため、大変重要な文書となります。声明文の内容は、学童や学校に通う人達は学校の環境や自宅の環境を守るために自分達は何をしたら良いのかについて書いています。、そのためには当然実現可能な条件をつけることに注意する必要があります。またこの声明文は選択したテーマの活動評価にも使われます。

 

4)学童の参加率について

 

全校生徒の最低15%が、このプロジェクトに参加し、活動に加わる必要があります。

 

5)環境保全に向けたテーマの選択と行動計画の作成について:

 

「環境保全」をめざす学校の子供達は、「水、エネルギー、廃棄物そして自然」からなる4つのテーマの中から毎年一つのテーマを選び出し、行動計画を作り活動に移して行きますが、そのテーマ毎で満たす条件が違ってきます。例えば水やエネルギーのテーマを選んだ場合、学校で消費する水やエネルギー量を以前に比べ最低10%削減することが条件になっています。 廃棄物のテーマでは、廃棄物の絶対量を減らす必要が無く、廃棄物の利用に関しては、今まで焼却していた廃棄物をリサイクルに回す、ことでこの条件をクリアーすることが出来ます。自然をテーマに選んだ場合は、学校の置かれた状況に合わせ、学校と自然の共生について企画や計画を立案し、それをどのように生かしていくのか、行動の成果を実証することでその条件を満たすことが出来るようになっています。 つまり、「緑の旗」運動の目標や満たさなければならない条件は選び出したテーマによって異なってくるということです。既に触れましたがテーマの選択権やどのテーマを最初に取り上げるかの順序は学校に任されています。ただ、活動開始前に、選び出したテーマとそのテーマに関する行動計画書を揃え、野外審議会に申請し認可を受ける必要があります。

 

テーマの選択と活動経過及び活動の報道と普及について

 

「水、エネルギー、廃棄物、自然」の4つのテーマの内から何を選択し、どの順序で取り上げるか、選択権は参加校に任されています。この内、最低3つのテーマをクリアーした学校はさらに進み「環境監査」活動への選択権を取得できます。テーマ別にとるべき行動について見ますと、まず選び出したテーマの実態について調べ、その後で節減や削減方法について考え、或いは改善方法を考え、それが、可能かどうか実践工作をします。そして、実践で得た成果を両親、供給会社、及び報道機関に伝えることで、児童の「地域活動」を「国レベル」の環境保全活動に繋げていく、そしてその活動の成果を、参加加盟国の国際部門を通し、「地球レベル」の環境保全の活動を広げていく。つまり、児童が行った環境保全対策は「地域活動」から「国及び、地球レベル」の環境保全問題に繋げていくということであります。この児童達の「地域活動」を通した「地球を考える」活動への成果を表彰し、そのシンボルとなっているのが「「緑の旗」であるということです。

 

テーマ「水」

 

  「水」について

 

テーマ「水」では、大事な水を無駄にしない生活習慣を身につけ、水汚染防止への行動につなげる国民の育成を目的にしています。デンマークにおける水供給と水の汚染問題について加筆しますと、デンマークの飲料水は農業・工業用水も殆ど100%、地下水に頼っています。地下水に頼るデンマークの国土は、最後の氷河期まで氷に覆われていた場所です。 デンマークが氷から解放されたのは今から約12000年前といわれ、全ての氷が融けるのに約4000年かかったとデンマーク史の中に書いてありました。こういうことでデンマークの国土の地面約20cm下には解氷水によって洗われた後に出来た氷堆石が横たわっています。 デンマークには山が無く、年間雨量は日本の半分以下の年平均約670mmです。国土は丘と平坦地が何処までも続き小川が流れ、沼地や湖がいたるところに在りますがその関係で降った雨は地表から氷堆石を通り地下に浸透しその地下水がデンマーク人の生活に欠かせない水になっています。国土の大半が森林で覆われ、その中で浄化されて出て来た日本の水に比べたらデンマークの農地を通過し、地下水となった水の質は必ずしも「良い水」とは言えませんが、頼る水はそれしか持たないデンマーク国民にとって、その地下水を汚染から守る施策は現世代に生きる国民・市民の大事な業務になっています。 そうかといってデンマークはそんな昔から水汚染への防止対策をとって来たのではありません。今から約30年前まではデンマークも、経済の繁栄を求め河川や海水の汚染をしてきました。つまり、デンマークが水汚染問題を取り扱い始めたのは1970年代に入ってからです。それまでは、大量生産と大量消費の社会を背景としたデンマークの産業界は、河川や海に産業廃棄物を投棄していました。例えば、デンマーク最大の川である、Gudeåenは、食肉解体場が浄化しない廃棄物をそのまま川に放流したため川の水が血で染まる程汚染していたこともありました。また、ある化学工場は、川に無浄化の汚水を投棄したいため、工場をその川付近まで移動したとも語られています。そしてまた、ある化学工場はタンクローリーで工場から出る汚水を海岸まで運びそこで海上に投棄した時期もあったと書いています(JP.22/8,2003)。 今から考えると信じられない事でありますが、そのような状況に歯止めをかけたのが、1971年デンマーク最初の環境大臣に就任した社民党のキャンプマン大臣です。 デンマークに環境省が誕生したのが1973年です。そして、1974年デンマーク最初の環境法が発効されました。この法律では、水の公害防止対策として、汚水の浄化、化学廃棄物の処理センターコムーナケミ(Kommmune Kemi)設立の決議と、化学廃棄物の埋め立て禁止など含めています。その後、水公害防止は1986年カデガット(Kattegat) 海域でロブスターの死骸が見つかったことを契機に、翌年の1987年、環境省は「滋養物塩を含むデンマークの水環境の公害防止に関する行動計画」という「水環境計画1号」(Vandmiljøplan1)を議会に提出しました。この法案では窒素やリンなどの肥料による地下水、地表水の汚染防止のため、リンの放出量を80%削減、窒素においは50%の削減を目標に掲げました。この目標値は1990年代において、産業界及び都市から出る汚水については目標を達成しましたが、農業部門においては目標値の半分しか達することが出来ませんでした。それでデンマーク政府・議会は農業部門を対象に「水環境計画2」を1998年に発効し、農業部門が出す窒素の使用をさらに厳しく取り締まる政策を導入しました。これと平行し有機農業への助成政策を導入したり、18,000ヘクタールの農地の山林への転換を図るための助成策を取り入れ、地下水や河川の汚染防止につなげることに努めて来ましたが、それでもまだ目標に達していないため、200312月現在「水環境計画3号」(Vandmiljøplan3)が議会で審議されているところです。このようにデンマークの人達は1970年代の前半の公害汚染を踏まえ、その後、現在に至るまで、水を汚染から守る政策に努めています。 デンマークの水の汚染事情について少し長くなりましたが話を本題に戻します。

 

人間の体の約60%は水分になっていますので、水が無くては何日も生きていけません。人間だけではなく動物も植物も生存するためには水を確保することが必要です。

 

地球上にある水の量は約14km3、この内、人類を含め動植物が必要とする淡水の割合は僅か2.6%と云われています。しかしながら、利用が困難な南極や北極にある淡水そして地下水の占める割合は約2%といわれていますので、実際人類と動物植物が利用出来る淡水は僅か0.37%と資料(注)に書いています。 世界の至る所で水不足が語られ、水の供給をめぐり世界各地で紛争が起きていのは、もともと水が人口増加に比例して増えていないためです。そのため、私達は水を大事に使うことを知っておく必要があるということです。(注)「森の響」017

 

「緑の旗」活動でテーマ「水」を選択する目的は、「水への認識を高めるため」としています。 ここでは、私達の生活における水の役割という問題に焦点を当て、地球全体の水問題から地域の水問題に関し、児童が水のデータを収集し、それを元に水の利用と節水について自らその対策案を考え、実行するということです。 「水」のテーマによって「緑の旗」を取得するためには、下記の条件を満たす必要があります。この条件は全ての国に適用される国際規則となっています。

 

a.       水の流れる過程(水道): 学校に入水する水はどこから来、どこに流れていくのか、         流れる過程で水はどのような処理がなされているのか調べること

 

b.      節水: 節水キャンペーンを通し、学校で使う水の量を最低10%削減すること

 

c.       雨水の有効利用:学校の屋根降り落ちる雨水を無駄にしないため、児童は貯水設備を作りその水を利用する方策の導入と地下水への還元方法を施策すること

 

d.      普及活動:最低2回水に関する学校での行動を地方の報道関係を通し報道すること

 

② テーマ「水」の活動内容について

 

水をテーマにした「緑の旗」活動でまず最初に児童は、地球の水の循環について知ることから始めます。地球の表面の約3分の2は海洋で被われていますが、海水は塩水であることを知ります。そして淡水は川、湖、内陸の氷や氷河であり地下水であることを知ります。水の循環においては、地球の表面にある水分は太陽の熱によって暖められ蒸発することを知ります。蒸発して出来た水分の塊が雲であることを知ります。地球の表面から蒸発のする水は肉眼では見えません。もし水分の蒸発を見たい場合は、冷蔵庫に入れてある物、例えばジュースの缶や瓶を、暖かい場所に出して見ると水分の蒸発状態が確認出来ます。何故かといいますと、冷たい缶や瓶を暖かい場所に出すとその表面に水玉が付きますが、水玉が出来るのは缶や瓶に穴が空いているわけでは無く、大気に含まれている水分が冷たい缶や瓶の表面に触れ、それが冷やされ水玉になるためです。地球の表面にある水は太陽の熱で温められ、小さい水玉となって蒸発します。その小さい水玉で出来たのが雲です。その雲が上空で冷やされ雨となって落ちてきます。大気の温度が氷点下以下だと、雨では無く雪や霙になって落ちてきます。雪や雨の降る量を合わせたものを雨量と呼びます。

 

地球上に降る雨や雪の量は場所によって違います。デンマークの国土面積は日本の九州とほぼ同じで約43.000km2ですが、東側にあるコペンハーゲンと西側にあるユトランド半島では降雨量は大きな違があり、場所によっては西側の降雨量は東側に比べ、倍近く振る場所もあります。具体的数値を見ますと、デンマークの年間降雨量(1年間に降る雨や雪の量を言う)は全国平均で670mmですが、コペンハーゲン市を含めたデンマークの東側の降雨量は約550mmに対し西側のユトランド半島全体の平均降雨量は750mmと多くなっています。九州とほぼ同じ面積のデンマークにおいてさえ、その場所によって降る雨や雪の量が違うということは、国土が大きい国においては、その地域のおける降雨量に大きな差が出てきます。それが一方では、動植物及び人間の住める条件への影響となって現れてきます。何故ならば、水が確保できない場所には人間も動物も住めないし、植物も生育しないためです。デンマークの水源は地下水であることについては既に触れました。地下水とは、地表に降った雨や雪が地中に向い表土から石や砂利を通り砂や粘土を通って地中に浸透します。その浸透する過程で石や砂の隙間に溜まった水が地下水であります。こういうことから、地表から地下水までの深さは場所によって違うし、また地下に溜まっている水の量も違います。海岸線に沿った地下水は大抵の場合、地表から浅い場所にあります。地下に溜まる場所がなくなると水は地表に出てきますが、この現象を地下水が「湧く」といっています。地下や地中に浸透しきれなくなった水は地表に出、湧き水となり、小川を作り、それが大きな川になり海に流れ込み、また湖の水となって溜まります。そして海に流れた水や湖水は太陽の熱で暖められ蒸発し、雲となり、それがまた雨や雪となって落ちてきます。つまり、地球上の水はこのようにして循環しています。 地表に落ちても寒くて水になれないのが氷で、北極や南極に近い場所、高い山の上に雪や氷が年中あるのは、その場所の気温は氷点下以下であるため融けないためです。 場所によって降雨量の違いが出るのは、地表や海の水は蒸発し雲となり上空で冷やされ雨となりますが、雲は風に流されるため同じ場所に雨となって降らないためです。 そして風が起きる理由は、地表にある大気も水分と同じように、太陽の熱で暖められると軽くなり上昇します。暖められた大気は地表から約1万メートルの上空に達すると冷やされ、重くなり、落ちてきます。このようにして大気は地球の地表と上空で循環しています。その循環の過程が風ということです。大事なことは私達は地球上で循環している水の状態を把握したり、自分達が使う水がどのような過程を得えて供給され、また、処理されているのか知ることによって、水を守る対策が見えてくるということです。

 

調査:日本でも場所によって、降雨量が違います。北海道の降る雨や雪の量や沖縄の宮古島に降る雨の量は幾らか調べてみると分かると思います。インターネットでアメリカに降る雨の量は、そしてオーストラリアに降る雨の量はいくらになっているか調べてみると分かると思います。さらに、中南米に降る雨の量も調べてみてはどうでしょうか。それと

 

アラスカや南極の年間平均気温を調べ、地球の大気の循環方向との関係について考えてみたらどうだろうか。

 

 a. 水道水になるまで過程

 

学校に来ている水道水は何処から来ているのであろうか。デンマークの場合は地下水でありますが、その地下水をポンプで汲み上げ砂や不純物を取り除いて水道の水として供給しています。デンマークでは飲料水は塩素などで消毒することを禁じています。塩素消毒しなくても飲めるような地下水にしておくためには、地表に降った雨や雪を汚染してはいけません。地下水を汚染から守る方法は、地下水を汚染する原因を探し、対策をとらなければなりません。デンマークの例を書きますと、国土面積の約62%に当たる265万ヘクタールが農地になっていますが、河川や地下水を汚染から守るため、デンマーク政府議会は肥料や殺虫剤、除草剤を農地に撒き過ぎをしないように指導しています。その指導の一つとして、全ての農家に対しデンマークの食糧/農業/漁業省の植物管理局は肥料の会計報告書の提出を義務付けています。肥料の会計報告書では畑に撒ける肥料の量は土壌の種類と作付する作物との関係で決まります。その一例を書きますと以下の表ですが、窒素肥料については必要量となっており、リンとカリについてはガイドラインです。

 

表。作物の窒素必要量(地域:ユトランド半島北東部とシエーランド島東部地方)

 

作物の種類

粗砂地

kg./ha.

細砂地

kg./ha.

粘土地

kg./ha.

リン

kg./ha.

カリ

kg./ha.

穀類2年連続後の大麦(春撒き)

131

123

124

20

60

穀類2年連続後の小麦(春撒き)

145

165

150

20

60

ビートの後の大麦(春撒き)

111

103

104

20

60

穀類最低2年連続後の小麦(秋撒き)

185

194

206

22

65

菜種(秋撒き)後の小麦(秋撒き)

125

133

146

22

65

穀類の後の大麦(秋撒き)

147

142

147

20

70

 

(出所:Vejledning og skemaer, gødningsregnskab1997-98, s.16)

 

上記の表で見る通り、デンマークの農家は所有する土壌の質にあわせ、作物を輪作するかあるいは同種の物を連作かによって、撒ける肥料の量が決まっています。また、作物を撒く時期によっても撒ける窒素の量が違います。例えば、麦類で見ると春に撒くか秋に撒くかによって窒素肥料の量が違います。秋撒きの肥料が多いのは、秋に撒く麦の生育期間が春に撒く麦に比べ長くなるためです。 デンマークの農家は、このような報告書を作り、毎年、食糧/農業/漁業省の植物管理局提出しています。 家畜を保有する農家においては家畜の糞尿に含まれている肥料分を計算し、所有する土地の面積と作付けする作物の種類に必要な窒素を計算し、農地と家畜の所有頭数を合わせるようにしています。 家畜の糞尿で賄い切れない肥料分は化学肥料で賄うかあるいは別な農家から家畜糞尿を引取り、それで補うかしています。 家畜の糞尿から出る窒素肥料が多すぎる場合は農地を確保するか或いは家畜の量を減らすかいずれかの選択をしなければなりません。 更にデンマークでは、作物が生長しない101日から21日までの間、化学肥料も家畜の糞尿も農地に撒いてはいけないことになっています。そのため、家畜を飼う全ての農家(ミンク農家も含め)は約9カ月分の家畜の糞尿を保管する場所やタンクを用意しています。これらの農業政策の後ろには河川や地下水を肥料汚染から守るために導入されたのであります。

 

調査への課題:学校に供給している原水の水源地を見学し、その原水の匂いや味など水質を調べてみる。水源地での水はそのままで飲めないならば、何故飲めないか、水に含まれている不純物を調べてみる。水源地は家畜の糞尿、工場用水、あるいは廃棄物の最終処分場によって汚染されていないかも調べて見る。学校や町に供給される水は、水源地から水道水になるまでの過程を知るため、水道局を訪ね飲料水になる過程と浄化にかかる費用について調べて見る。供給されている飲料水の水質基準値についても調べてみる。

 

これらの課題に回答が得られことによって、学校や町に供給される原水の水質を知ることが出来るし、その原水が飲料水となるまでの過程と浄化にかかる費用を知ることが出来ると思います。また、水源地の汚染状態を調べることを通し、汚染の原因を知ることも出来、飲料水となった水の水質を知ることによって、自分達の飲んでいる飲料水はどういう水なのかも知ることが出来ると思います。この結果から私達はどうしたら、水を汚染から守ることが出来、また、浄化にかかる費用削減への方策も出てくると思います。それが、将来、飲料水の質の向上と費用削減に向けた行動、水を無駄にしない行動に繋なげられると思います。

 

b. 水の消費と汚水処理について: 

 

水は生きるために大事な物であるため、水の無駄使いをしないようにしなければなりません。どうしたら、水を節約出来るのであろうか。そのことを知るためには、日常使っている水の量を知ることから始めます。1990年デンマークの家庭で消費する水の量は平均すると一人当り1日当たり182リットルでした、 大事な水を節約する意識の高まりで2003年には一人当たり1日に消費する水の量は平均125 リットルまで減りました。それでも一人当たりの水の消費量は年間で125×365日で計45,625 リットル、約46m3の量になります。因みにデンマークの人口は約535万人で年間の水の消費量の内、家庭で消費する量の割合は30%、農業と園芸部門で消費する量は33.3%、産業界で消費する量は18.7%、学校や病院等の施設が消費する水の量は全体の5%、その他12.9%になっています。

 

調査:インターネットで厚生省のデータバンクを呼び出し、日本人一人当たりの水の消費量を調べてみる。自分が住んでいる町では一人当りどの位の水を使っているかも調べてみる。また自分の家では何に水を使っているか、調べてみる。

 

家庭で使う水は、お風呂、トイレ、洗面所、台所、洗濯機が考えられます。水道の蛇口から出る水は汚れていませんが、お風呂で使った水には石鹸の残りや髪を洗ったときのシャンプーなどの汚れが混じり汚水になります。トイレで使った水も汚水になり、台所で使った水にも洗剤や汚れ物が混じるため汚水になります。このように家庭で使われた水は汚水となり下水管を通って汚水処理場に流れて行きます。つまり、蛇口から出た水は全て下水になるということです。 汚水を処理せず川に流したり、海に流すと公害となるのは自然は汚水物質を分解することが出来ないためです。特に化学物質の残量が多い工業用水をそのまま川や海に流したらどのような結果になるか。水俣病(注)という公害事故を考えて見たらよいと思います。

 

(注):水俣病とは熊本県の水俣市で起きた事件で、工場排水で汚染された魚や貝を食べた人達がメチル水銀中毒に罹った事件で日本政府は公害として認可した。

 

毎日の生活において水を使えば使うほど汚水が出てきます。汚水はそのまま自然に返すことが出来ないため、汚水処理場で処理してから川や海に放流しますが、そのためにお金が掛かります。何故かというと汚水の処理過程を見ると解ります。汚水処理について箇条書きすると次の通りです。

 

   汚水の中に入っているトイレットペーパーや、紙オムツ、砂等の固形物を機械で取り出す。

 

   生物的汚水処理で、細菌やカビの力を借りて汚水に含まれている廃物を分解し、硝酸塩とリン酸塩に変えます。

 

   硝酸塩とリン酸塩はさらに生物処理と化学処理で除去します。

 

   この過程を得て残った物が黒くて、臭い汚泥ですが、この汚泥は焼却するか、農地に肥料として散布するか、あるいは最終処分場に投棄するかします。

 

調査:毎日、学校から出る汚水の量を調べ、学校から出た汚水はどのような工程を得て汚水処理場に流れているか、地図の上に学校から出る汚水の流れを書き、その流れに沿って、汚水処理場に行き、学校から出た汚水はどのように浄化され処理されているか、調べて見る。例えば、汚水に含まれている固形物はどのように取り出しているのか、処理後の汚泥にはどのような物質が含まれているのかについても調べてみる。 この調査の結果をもとに独自の汚水処理に関するアイデアを出し、汚水処理場のモデルを作って見る。

 

c. 節水について 

 

学校に給水される水の過程と使用後の水の流水過程を知った後は水の消費削減についてのテーマが節水となります。節水とはただ水の消費を減らすという意味ではなく、日常生活に最低必要な水は使いますが、無駄をしないという意味です。 例えば、水道の蛇口から出る水で汚れた手を洗う時は、たくさんの水は使わないようにし、シャワーを使って体を洗う時も、石鹸で体を洗っている間はシャワーの水は止める、歯磨きする時も水の流れぱなしを止め、歯ブラシを濡らすための水、歯ブラシが終わった後に口をすすぎ時の水だけにすれば、コップ一杯の水で済むはずです。また台所で食器洗いをする時は流れぱなしの水で洗わず、ボールなどの入れ物に入れて洗うようにすれば、かなりの節水に繋がると思います。つまり、節水とは生活する上で使っている水を無駄にしないという配慮であります。

 

「緑の旗」を取得するためには、学校で消費する水の量を最低10%削減することです。水の削減運動の始めとして、学校で使用している水の量を計ることから始めます。その後で節水キャンペーンを企画しますが、何故水を節約しなければならないのか、節水する理由を伝えることから始めます。 節水の理由には例えば、学校で水を節約し、削減するという意味は ①自然に負担をかけないこと ②水資源の保存に繋がること ③お金の節約に繋げられること等の理由があげられます。 この節水キャンペーンの役目は、学校で使用している水の節水が「地域社会」においてどのような意味を持つか、学童が理解するという役割にもなっています。つまり、人が集中して住んでいる場所では当然たくさんの水が消費されます。水源地からポンプで水を水道局に送りそこで水道水として浄化しその後またポンプを使って学校や家庭あるいは工場・事務所などに給水されています。学校や家庭などで使った水は汚水となり、またポンプを使って汚水処理場に送られ、そこで汚水処理し水は川や海に放流し、汚水から取り出した汚泥は農地に撒いたり、焼却したり、廃棄物の最終処分場に埋め立てしたりしています。 

 

「日本の場合」考えて見よう:大阪市の人口は約250万人、そのため給水される水の量は年間約53400万m、水源地は琵琶湖の水になっていると言われています。 もし、大阪市の人達が10%の水を節水したら、琵琶湖から毎年5000万m3トン以上の水を供給する必要が無くなくなります。その分琵琶湖の水質の改善に繋がり、その結果、琵琶湖の住む魚や貝類の水環境が保全に繋がるかも知れません。また、5000万m水の給水が減った分だけ、ポンプで送る給水量が減り、ポンプも水道管への負担がかからない分、長く使えるはずです。 またポンプを回すための電気代も節約出来ます。上水が5000万m3 減るということは下水も同じに減るということです。その結果、上水と下水を合わせると1m3の水処理の節約になり、当然学校の水道代も減り、家庭の水道代も減るということになります。 水の節水はこうした、「地域社会」への貢献に繋がるということです。

 

c-1) どうしたら節水できるか。

 

学校で使う水の節水のスタートは、水を使っている場所、あるいは水を出す場所を確認することから始めます。水道の蛇口、トイレ、シャワー室、その他どこで水が使われているのであろうか。水を使っている場所の確認が出来たら水漏れしているヵ所があるか無いか確認します。もし水漏れしている蛇口があったら、水漏れを止めないと水が無駄になり、節水キャンペーンの効果が失われるためです。

 

調査:水漏れしている蛇口があったら、どれだけの水が無駄になっているか調べてみよう。調べる方法は、時間と漏れる量で計算出来ます、 例えば5分間で漏れている水の量を測り、それを12倍すると1時間に漏れている量が計算出来ます。 1時間で漏れる量を24倍すると1日に漏れる量が計算でき、それを、365倍すると1年間に漏れる水の量が計算出来ます。 水漏れをお金に換算する場合は、漏れた量に1m3 当りの水道料金をかけると計算出来ます。こうして学校全体における水道水の水漏れをチェックし、全て、水漏れのしていない蛇口やトイレが確認できた後、節水キャンペーンに入ります。

 

水の消費量チェック: 節水の行動を起こす前の2週間、授業が始まる5分前と授業が終わった5分後に水道のメーターに出ている消費量を計測します。測るのは授業がある毎日で、週末や祭日など休みの日は計測する必要はありません。水の消費量を書き取るため、あらかじめ表を作ったよいと思います。例をあげると:

 

           学校における水の消費量測定表(例)

 

         (期間:2003xxxx日―xxxx日)

 

水量メーター

月曜日

火曜日

水曜日

木曜日

金曜日

1週間の消費量計

放課後

15,345

19,345

xxx

xxx

xxx

 

授業開始前

11,345

16,345

xxx

xxx

xxx

xxxm3

1日の消費量

4,000

3,000

xx

xx

xx

 

この表では、月曜日の水の消費量は4,000となっています、月曜日の放課後から翌日の始業までに使った水の量は16,345-15,3451,000m3となりますが、この量は放課後のクラブ活動で使うか或いは先生達が使用した水の量です。このようにして2週間分(授業日数にして10日間)のデータを収集します。2週間分の水の消費量を、学校を利用した人数で割ると一人当りの水の消費量が計算出来ます。 計算方法は: 

 

一人当りの水の消費量=学校における水の消費量学校を利用した人数(注)

 

(注)学校を利用した人数=生徒、先生、その他の人×10倍(月から金までの2週間分)

 

このようにして節水キャンペーン前の水の消費量が計算されました。この量を10%を削減するためのキャンペーンに入ります。 学校を利用する全員の協力が無いと10%の削減が困難ですので、学校を利用する全部の人達が節水キャンペーンに協力します。

 

それでキャンペーンでは:

 

― 節水キャンペーのプラカードを作り、全てのクラスに貼ること。

 

― 水が出る全ての蛇口やトイレには節水マークを書いた張り紙をすること。

 

― 節水キャンペーンの掲示板を作り、誰でも節水アイデアを張り出すことが出来るようにし、アイデア賞をあげること。

 

― 節水プラカード展を開き、掲示すること。

 

― 休み時間を利用し校内放送で節水アイデアを放送すること。

 

― 水漏れが無いか、チェックすること。

 

― 節水で得た水道料金は児童に還元出来るよう、教育委員会と交渉し、交渉して得たお金で節水企画に当てるなり、別なテーマの資金に使うようにすること。

 

など、色々なアイデアがあると思います。

 

企画提案:節水キャンペーンへのアイデアを募る企画を作り全生徒、あるいは先生に応募するよう呼びかける方法もあると思います。また、学校に水道局や汚水場に勤務している人に来てもらい、節水について話しを聞く企画もあると思います。その他、省水型の蛇口を作ったり、トイレを作ったりしているメーカーの話しを聞く企画もあると思います。

 

c-2). 節水状況の公示

 

節水キャンペーンの効果が直ぐ解るように、毎日の水の消費量をグラフや数字で表し学校の入口か全生徒先生が見える場所に張り出します。節水キャンペーン中は、キャンペーン前と同じ方法で2週間の水の消費量を測ります。 節水キャンペーン前とキャンペーン後の水の消費量がどれだけ減ったか、「緑の旗」を取得するためには最低10%の削減が必要です。 節水キャンペーン後においても、10%の節水分は継続されなければなりません。学校を利用する人達一人当りの水の消費量に換算し節水量を計算しておけば、学童が増えたり、減ったりした場合でも水の消費量の管理が出来るはずです。 参考までにデンマークの一般家庭における水の消費量の内訳は以下の通りです。 

 

         デンマークの一般家庭における水消費量の内訳

 

水の用途

一人一日当りの消費量

一人年間消費量

食事と飲水

 9 リットル

3,285リットル

洗面と歯磨き

17 

6,205

風呂

34

12,410

トイレ洗浄

34

12,410

衣類の洗濯

27

9,855

食器洗いと掃除

34

12,410

その他

15

5,475

合計

170

62,050

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(出所:Grøn flag-Grøn skole Vand s.15

 

d. 雨水を無駄にしないため

 

「緑の旗」運動では学校における節水の他に、学校の敷地以内に降った雨が無駄にならないようにすることも行動計画の中に入っています。 例えば学校の屋根に降った雨を集め、学校の野菜畑や運動場に撒いたり、また温室の水として使ったりして使用し、また地下水に流れ込むような仕組みを作ったりして利用します。 雨水は、汚水ではないので、このような目的に使うことで、高い水道水の節水にも繋がます。それで、学校に降る雨水を利用する行動計画を作るには、今、雨水が今どうなっているか、その情報を集めることからスタートします。つまり、学校の敷地内に降った雨は何処に流れていっているのか、という情報が必要です。 デンマークでは、この情報は役場や市役所の技術部が持っているので、質問事項を用意し聞きに行けます。

 

調査: 自分達の学校の屋根にどれだけ雨が降るか、計算してみること、そして降った雨水はどうなっているのか調べてみること。その後で学校の屋根に降った雨水がどこにどう流れているか、地図を作ってみること。 

 

調査の目的:学校の屋根に降る降水量の計算には、屋根の面積を知ることから始まりますが、屋根に登って測る場合でも、屋根の面積をどうして測るか、高過ぎて上れない屋根はどうして屋根の面積を測るか知恵が必要です。実測出来ない場合は学校の設計図があれば計算出来るはずです。何処にその設計図が保管されているか探す出しことも大事な活動です。何故ならば、これらの作業や探し物をすることによって、屋根の面積の計算方法を取得する他、学校の設計図面を探す作業を通し社会の仕組みを知りまた設計図の読み方を知ることが出来るからです。

 

既に触れました通り、デンマークに降る雨の量は地域によって違います。デンマークの国土の約9倍ある日本においても、場所によって降る雨の量は大きな違いがあるはずです。日本の統計年間で降雨量を調べて見ますと、以下の表の通りです。

 

表 日本の各地における1961年~90年までの年間平均降雨量(単位:mm)

 

北海道

(札幌)

東北区

(仙台)

関東区

(東京)

北陸区

(金沢)

東山区

(甲府)

東海区

(名古屋)

近畿区

(大阪)

中国区

(広島)

四国区

(徳島)

九州区

(宮崎)

1,130

1,205

1,405

2,593

1,055

1,535

1,318

1,555

1,615

2,435

 

(出所:日本統計年鑑平成1323ページ)

 

 

 

上記の数字から東京や大阪の水不足が発生する理由は見えて来ると思います。何故ならば、降雨量に面積をかけて出た自然の水の供給量に対し、その地域に住む人口を比較して見ると一人当りの水供給量は他の都市に比べ、東京や大阪がいかに少ないか理解出来ると思います。 人口一人当たりに見た降雨量を試算したのが下記表です。 表における人口数は1999年の都市別人口をもとに、四捨五入した数値であります。

 

表。都市別に見た一人当りの降雨供給量試算値

 

 

東京

大阪

広島

宮崎

降雨量

1,405

1,318

1,555

2,435

面積(km

1,066

 893

4,086

2,483

降雨量計

1,498km

1,177km

6,354km

6,046km3

人口数

1,200万人

880万人

120万人

290万人

一人当りの降雨量

125リットル

134リットル

5,295リットル

2,085リットル

 

上記の試算で見る通り、東京や大阪の住む人達の水は、その場所では殆ど確保出来ないということが解ります。 その為、遠く地方から東京や大阪で使う水を供給しています。このような理由で学校で雨水を無駄にしない運動は特に東京や大阪のような大都市においては大きな意味をなしています。

 

調査:自分の住んでいる町や市にどれだけ雨が1年間に降るか、測ってみるかあるいは気象庁に聞いてみる。その降雨量に学校の屋根の面積をかけると、学校の屋根に降る雨の量が計算できるので、幾らの量になっているか計算してみる。

 

 

 

d-1).雨水の利用について

 

ここでは学校の屋根や敷地内に降った雨水を利用するための貯水設備を作ることが必要ですが、どれだけの水を貯水するか(サイズ)、誰が図面を作り誰が貯水設備を作るか(工事)、材料はどうして確保するか、自分達で全部できるか、出来ない場合は誰に手伝って貰うかなど、貯水設備を作る前にいろいろなことを決める必要があります。 そして、また出来た後の管理は誰がするか。その水を何に利用するか等、を決めないといけません。さらにまた、貯水漕から溢れ出て学校や周辺の建物に水公害を起してはいけないので、貯水漕の案が出来たら役所から許可や出来た後の検査も受けないといけません。何故ならば、屋根に降る雨水の量とそれを貯水する貯水漕のサイズ関係の検査、貯水漕と建物との距離は何メートル離せばよいのかなど、色々な決まりが在るからです。こういうことから関係役所の計算も含め協力を得る必要があるということです。 それで出来上がった貯水漕とその中に溜まった水の用途とはどうするか。その例:

 

  貯水漕の中に水草を植えたり、魚や水中動物を肥育し、生物の教材として利用する。

 

  学校の野菜畑に撒いたり、あるいは、そこから配管して温室用の水として使う。

 

また、使い切れない場合はどうするかの対策も考えないといけないでの、その場合は貯水漕に溜めた雨水は川に流すか、地下水に入れるような工夫をすれば良いと思う。その場合は貯水漕から川までの配管ができるか、あるいは地下水に浸透させるためにはどうしたら良いか考える必要があります。 大事なことは雨水が汚水と一緒になって汚水処理場に行かないように工夫することであります。この他、雨水の利用に関するアイデアは、校内キャンペーンを開き募るかあるいはインターネットで国内外の雨水利用に関するアイデアを検索見る方法もあると思います。 

 

実験:学校の屋根に降る雨で池を作り、水草や水中動物を飼ってみてはどうか。雨水の利用についてアイデアを出し合い実践をしてみようではないか。

 

 

 

e. 普及活動について 

 

「緑の旗」活動ではこのような活動を普及させるため最低2回、その地方における地方新聞、テレビ、ラジオを通じ報道して貰うことになっています。その最初として、学校で始めようとする「水のテーマ」のプロジェクト企画を報道してもらうことです。そしてその後の活動や活動によって得た成果も報道しても貰うようにします。 報道してもらう内容は「緑の旗」活動の一環として、単なる「緑の旗」を取得するためでは無く、水と自然及び社会との関係を理解するプロジェクトであることを知って貰うため、水に関する全領域に関する授業として、水実験、水の節水、水道の上水・下水の調査・雨水利用プロジェクトなどであることを伝えて貰います。そしてプロジェクトには、全地域の人達の協力が必要であることも伝えてもらいます。 その為には、報道してもらう文章も作らないといけないので、「水テーマ」プロジェクトの中に常時報道関係者と連絡が取れる「報道部」の設置が必要になってきます。その「報道部」が、「水テーマ」プロジェクトの進展と動向について、地域社会に常時報道して貰う対策をとることです。そのため、報道内容の文章作りに国語の先生の協力が必要になってくるかも知れない。「報道部」が必要とするデータ収集をするために、各「水テーマ」のグループは、どのような状況になっているか記録を取って置く必要があるので、日記を書いておくことが大事です。

 

デンマークの例として報道記事を書く時の注意点:

 

  題名、大きな項目のみ書く

 

  はじめに(序論)、「何を、誰が、何処で、何時」始めるか、簡単にまとめて書く

 

  はじめにの項目に合わせその内容を簡明に記述する。

 

  報道してもらいたい重要で大事なヵ所を書く。

 

  出来るだけ文章は短く書く。

 

  原稿は手書きをやめ、コンピュータなどの機械を使い、文書の行間は2倍とする。裏面には書かないこと。

 

  担当者の連絡方法や名前を書き、必要な情報源への連絡先を伝える。

 

  読者が理解しやすいように文面は解り易く書き、公文書の文面にならないように注意する。

 

  地方新聞・テレビやラジオの報道内容に比べ、自分達が作った報道文を比較して見る。

 

報道関係者に渡す前にクラス内で読み上げ、仲間のコメントを貰う(出所:Grænt Flag    

 

Grøn Skole, Vand s.21)。

 

テーマ「エネルギー」について:

 

緑の旗運動「エネルギーテーマ」においても、水のテーマと同じように、国際規定で求められている、学校内に環境委員会を設立すること、環境行動計画を作成すること、全校生徒の最低15%が活動に参加すること、テーマ合わせた環境規約の作成、そして毎年最低一つのテーマについての活動をする、ことを守るようになっています。そして、テーマ「エネルギー」の活動では、下記の内容を満たすことになっています。

 

満たさなければならない活動内容

 

   何処からエネルギーが供給されているか。

 

・ 学校所在地におけるエネルギー供給システムの図面を作ること。

 

・ グループあるいはクラス全員で最低1カ所の発電所、あるいは暖房供給会社を見学し、見学した発電所や暖房供給会社について報告書を作成すること。

 

・ グループまたはクラス全員で最低1ヵ所の再生可能エネルギー施設を見学し、報告書にまとめること。

 

   省エネルギーへの行動計画をつくる。

 

・ 電力消費を最低10%削減するための省エネ計画を立てること。

 

・ 省エネの動機を作るため2週間の節電キャンペーンを実行すること。節電キャンペーンは学校全体(生徒・先生・事務員など学校利用者全員対象)で実施すること。

 

・ キャンペーン後の1ヶ月、毎日授業開始前と放課後においてメーターを書き取り、キャンペーンの効果を調べること。

 

・ 節電の目標がどの程度達成されたか調べ、節電が目標値に達しない場合はその原因について調べて見ること。分析の結果をもとに新たな対策を採り目標値を設定すること、削減目標が達成するまで対策を録り続けること。

 

   広報キャンペーン活動

 

学校での省エネ活動について地元の人達に知らせるために、下記の報道機関や場所を利用し広報活動をすること。

 

   ラジオ・テレビ・新聞に記事の掲載依頼をすること。

 

   省エネ活動に関する討論会を主催したり、市役所や役場あるいは図書館内に活動内容を展示し市民・住民に鑑賞してもらうこと。

 

   学校における省エネ活動の結果を書いたミニ新聞を発行し、町内や市内の全家庭に配布し、各家庭における省エネ対策について伝えること。

 

   エネルギー供給に関する新たなモデルや装置を作り展示すること。

 

緑の旗活動で「エネルギー」をテーマとして選ぶ場合は、エネルギーの日常生活における意味とその取り巻く社会的状況を知り、それを踏まえて、何故エネルギーを節約しなければ、ならないのか、その理由も語らなければなりません。 

 

テーマ「廃棄物」について

 

「緑の旗」のテーマ「廃棄物」においても、活動を認可してもらうためには、国際規則にある、環境委員会を設立すること、環境行動計画を作成すること、全校生徒の最低15%の学童が活動に参加すること、環境規則を作成することの条件を満たすことになっています。テーマ「水」や「エネルギー」は学校で消費する水やエネルギーを最低10%削減することを目標にして活動していますが、テーマ「廃棄物」では、学校が出す廃棄物のリサイクル、コンポスト化を通し最終処分場に出す廃棄物や焼却される廃棄物の量を最低10%削減することを目標にしています。デンマークの資料(資料skald i skolen s.2によると「この活動では、学童は廃棄物が出る理由、国全体で出す廃棄物の量などについて調べ、学童の体重と比較しどれだけの量になっているか知らせその量の大きさを知ってもらう」と書いていますが、学校から出る廃棄物だけでは、量的イメージが湧かないためだと思います。 デンマークの家庭から出る生活廃棄物は、①日常の生活から出る廃棄物 ②家具や絨毯などの粗大ごみ ③庭から出る草木のごみ、④容器の廃棄物 ⑤その他の 5種類に分けられています。2002年における家庭から出た廃棄物の量は約312万トンで一人当たりに換算し約580グラムになり、月平均にしますと約48kgということです。この量を学童の体重と比較させて量の大きさを知ってもらっています。因みに、デンマークの廃棄物統計によりますと、2002年における、デンマークの廃棄物の排出量は1,310万トンでこの内訳は生活廃棄物312万トン、サービス産業から出る廃棄物136万トン、産業廃棄物231万トン、建設土木廃棄物404万トン、汚水処理場廃棄物101万トン、火力発電所廃棄物(燃え殻、チリ)123万トン、その他3万トンとなっています。この量をデンマーク人一人当たりに直しますと2.45トンの廃棄物という計算になります。この中から少しでも学校から出る廃棄物を削減しようとするのが、「緑の旗」運動の目標であり、目的になっています。 

 

テーマ「廃棄物」とは:

 

廃棄物とは何か、何故、廃棄物が出るかについて考えて見たいと思います。私達は毎日の生活で必要なものは酸素以外に水であり、食料であり、エネルギーでありますが、その他に衣類、や住む場所も必要です。また、生活必需品と呼ばれる台所用品から始まり、テレビ、ラジオなど沢山の物を必要として買っていますが、これらの物を買うということは、物を包んでいる紙やプラスチック、ダンボール箱のほか木の箱も買うことになります。パンを買うとパンを包んでいる袋、テレビを買うとダンボール箱の中にテレビが入っています。これら袋やダンボール箱は必要が無いのでどこかに処分しないといけません。これが廃棄物となるのです。ということは物を買えば買うほど捨てる物が出てくるということです。解りやすく言えば、物を買うことは廃棄物を買うことだということです。 沢山物を買うと捨てる物も沢山でるので、捨てる場所や処分する施設を沢山必要とし、その設備を作るのにお金がかかります。このように物を買うことは廃棄物を買うことになり、その処理にお金がかかるので、削減に学童も協力するというのがテーマ「廃棄物」の目的になっています。この目的を達成するため、具体的活動内容として次の項目を挙げています。

 

  廃棄物の流れを知ること

 

自分達の学校や家庭から出る廃棄物は、どのように処理しされているか調べて見ること。

 

自分達の学校から出る廃棄物の中から1種類または複数の廃棄物を選び出し処理される過程と処分される場所を調べて見ること。

 

学校に隣接する3種類の事業所を訪問し、その事業所が出す廃棄物の種類を 調べ、それがどのように処理・処分されているのか調べること。

 

  自分と学校の廃棄物について

 

     教室や事務所、教員室、実験室などからどのような廃棄物が毎日出ている   

 

  のか調べて見ること。

 

     学校全体から出る廃棄物は次のように分類すること

 

ア.    食べ残しの廃棄物

 

イ.    リサイクル用の紙

 

ウ.    焼却用廃棄物

 

エ.    その他の廃棄物

 

     教室や学校全体から出す廃棄物を削減するためにはどうすれば良いのか計画を立てること。

 

     学校で消費する紙の量を最低10%を削減すること。

 

  学校のコンポスト

 

   学校から出る食べ物残しや校庭から出る草木の廃棄物を入れ、堆肥にするためのコンポスト容器を1個か数個作り、これらの廃棄物は毎日集め、コンポスト容器に入れること。

 

   コンポストの管理を誰がするか、出来た堆肥は何処に使うかの計画を作ること。

 

  活動を普及させる

 

   全校、学校周辺の住民や企業及び両親に廃棄物活動を知らせるための計画を作り、広報活動を実施すること。       

 

これらの項目を満たすための行動計画を作り実行するというのがテーマ「廃棄物」です。

 

 

≪以上の情報は、ネット及び取材等で入手した内容です。テーマ「自然」は省略しますが、資料有ります。≫  2005年7月25日