デンマークＮＯＷ
第一次世界大戦とデンマークの国土
1914年6月28日、オーストリア・ハンガリーの皇位継承者夫妻が、セルビア人に暗殺されたサラエボ事件が起因となって、勃発した第一次世界大戦（1914年8月1日～1918年11月11日）から今年2018年の11月11日で丁度100年目を迎えます。今年、第一次大戦終戦100周年記念日が11月11日、フランスで開催され、アメリカの大統領、ドイツの首相など各国の首相が数多く参加しました。
第一次世界大戦では戦闘機、戦車そしてドイツ軍は化学兵器として塩素ガスやホスゲンガス（無色の有毒ガス）などの大量破壊兵器やガスが使われたこともあり、参戦した兵士の数7千万人の内、 戦死者数は約900万人、負傷し障害者になった数は約2200万人、不明になった数は500万人ともいわれています。第一次世界大戦下で死亡した市民の数は650万人（内デンマーク人では漁民と船員722名）とも言われています。
第一次世界大戦中、デンマーク政府は中立政策を維持し、当時の外務大臣エアリック・スカベニウス（Erik Scavenius, 1877年6月13日生まれ、1962年11月29日他界、外務大臣職1909-10年、1913年-20年、1940-43年、首相1942年11月9日～1943年8月29日）は、戦争に巻き込まれないよう最善を尽くしました。デンマーク政府は中立を保守するため治安部隊4万人を首都圏に配属し1万人をユトランドに配属しました。それに合わせて海軍はデンマークの海域に機雷を敷設しました。デンマーク人の中で不幸だったことは、1864年ドイツとの闘いで負け、南ユトランド地方を割譲し、第一次世界大戦の頃この地方に住んでいた人達の中からドイツ軍に従軍せざる得ない人たちが出てたことです。この従軍兵の中に、私がデンマークに渡航するに当たり大変世話になった農学校の校長を務め、1965年2月から1967年4月までの約2か年、静岡県の袋井市に建設したデンマーク牧場の所長を務めたクリスチャン・ムーラ－氏(K. Møller, 1895-1984, 89 才で他界)が居ます。幸い彼は戦死すること無く、帰国できたわけですが、従軍したデンマーク人内4,140人が戦死しました。第一次世界大戦終戦100年を迎え、デンマークの南ユトランド地方では、11月11日終戦100年を記念し、戦死した人たちへの哀悼式典が開かれることになっている他、コペンハーゲンの”Kastellet” (1662年クリスチャン4世が建設した要塞)においてはバックパイプ（風笛）による ”Amazing Grace” の演奏などでの記念会が開催されることになっています。またデンマークテレビでは、記念礼拝の模様を実況中継する他、フランスのドキュメンタリー映画の放映も企画しています。第一次大戦後の1920年国民投票でデンマークが1864年に割譲した時の一部がデンマーク領なりました。デンマークの国土面積について1863年頃の地図でみると次の通りです。
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1918年11月11日第一次大戦でドイツが敗戦、戦勝国がドイツに科した賠償金額は1,320億金マルクと言われています（ドイツの貨幣は銀または金本位制度を引いていた）。第一次大戦後ヨーロッパ諸国にはたくさんの国が誕生しました。その中で1920年南ユトランド地方のドイツ領となっていたシュレスヴィヒ州で、国家への帰属問題に関する住民投票が実施されその結果北部シュレスヴィヒの人たちがデンマークへの帰属を望み、現在のデンマーク国土43,000km2となりました。南ユトランドに住む人たちの中に多くの国民党支持者がいると聞いたことがありますが、国民党は保守系の一派で、難民受け入れに対し反対者が多く、愛国心が強いのは1864年から1920年の約56年間ドイツ領に編入されていたことも原因になっているのかと、推察されます。
１９１２年ごろ第一次世界大戦前のヨーロッパ諸国図
ヨーロッパ諸国は大国が統治していました。
ドイツ、オーストリア・ハンガリー、ロシア、イギリス、フランス、オスマン帝国、北欧三国
地図出典：Kristelig Dagblad Fredag den 9. nov. 2018
第一次世界大戦後に誕生した国々図
フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィア、アルバニア、トルコ。
地図の出典：Kristelig Dagblad Fredag den 9. nov. 2018
第一次大戦終戦から約20年後の1939年9月1日、ナチス軍がポーランドに侵攻して始まったヨーロッパにおける第二次世界大戦や、太平洋戦争などにおいて、また約千万人の人たちが戦死し・戦争の犠牲となりました。その後も世界各地で紛争が勃発し、その都度多くの人たちの命が奪われています。人はなぜ殺し合うのか、人類の宿命を断ち切ることが出来ないのだろうか。そんな思いでいます。
2018年11月11日