風のがっこう便り2017

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 「風のがっこう便り2017年」では京都議定書の約束を守ったデンマークのエネルギー政策について書いています。

何時読んだ資料だったか忘れましたが、ドイツの雑誌「ジャーマン・ウオッチ」で、世界58か国中、最も地球温暖化防止対策を進めている国はデンマークであると書いていました。またWorld Values Surveysでも、世界で最も信頼し合っている国民はデンマーク人で、国民の信頼度は78%と高く、86か国中*でデンマークがトップとなっていると書いていました。

信頼し合う国民性が労使交渉に、国外との交易に反映されているためか、デンマークの就労者の最低時給額が日本に比べ、2.5倍高く、デンマーク人の輸出額は一人当たり日本に比べ3.5倍と多く、また世界の企業がデンマークに投資し、国外からの就労者も多く入って来ています。

デンマーク人は信頼できる国民であり、その結果の一つとしてデンマーク人は世界の中でも最も幸せな国民と言われているのかもしれません。そして、デンマーク国民は1位を目指しているわけではなく、より良く生きる社会を目指している国であると言えます。* 86か国の平均値25

新しい年2018年もよろしくお願いします。

ケンジ ステファン スズキ

「風のがっこう便り」2017年 
2017年の年末を迎え、「風のがっこう2017年」をお送りします。今年は春2回、秋に2回の研修を実施し、全部で40数名の人たちが受講しました。「風のがっこう」を開設したのは1997年の6月で、今年2017年6月で20周年を迎えました。この間、約2000名の人たちが「風のがっこう」の研修を受けていますが、デンマークのエネルギー政策、社会福祉政策、教育政策など、デンマーク人の社会作りの施策が受講者にとって何等かの参考になっているのであれば、大変嬉しいです。下記の写真は「風のがっこう」の受講生のみなさん(一部)です。


1.京都議定書への約束を守ったデンマークのエネルギー政策について
「風のがっこう」を開設した同じ年の1997年12月、京都において第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)が開催されました。この会議において、地球の温暖化防止を防ぐため、諸外国が協力し地球温暖化ガス削減の約束を取決めました(京都議定書*)。
デンマーク政府は「京都議定書」で約束した地球温暖化ガスの削減に向け、風力発電やバイオマス及びバイオガス発電など国内資源を利用する政策を採り入れてきました。
その結果、表1で見る通り、1990年におけるデンマークの地球温暖化ガスの実質総排出量は7040万トンでしたが、2013年5510万トンに削減(22 %の削減)し、デンマークが約束した削減義務8%を守りました。デンマークの1990年から2016年における地球温暖化ガスの排出量の推移について表示したのが図1です。
表1.デンマークの地球温暖化ガス排出量推移(単位:CO2換算百万トン)

 

1990

2000

2005

2010

2013

2014

2015

2016

実質

70.4

70.9

66.4

63.3

55.1

50.9

48.4

50.4

季節調整

78.4

72.6

68

61

55.7

53.8

52.5

53.6


京都議定書でデンマークが約束した削減量は1990年の排出量に対し2008年~12年の間に8パーセント削減するという約束で、実績は22%削減した(5,510/7.040=0.78, 1-0.78=22%) 。


*京都議定書(英: Kyoto Protocol)は、1997年12月に京都市の国立京都国際会館で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で同月11日に採択された、気候変動枠組条約に関する議定書である。京都議定書第3条では、2008年から2012年までの期間中に、先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量を1990年に比べて少なくとも 5%削減することを目的と定め、続く第4条では、各締約国が二酸化炭素とそれに換算した他5種以下の排出量について、以下の割当量を超えないよう削減することを求めている。(-8%) 削減目標国:- オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、(欧州連合15か国)(-6%) の削減義務国 - カナダ(離脱)、ハンガリー、日本、ポーランド (以上Wikipediaから引用)

図1.

デンマークにおいて、地球温暖化ガス削減が出来ている背景の第一は、二酸化炭素を多く排出する石炭、石油や天然がスの削減に努めているためです。図2はデンマークの燃料別に見た発電量の推移ですが、デンマークの石炭や天然ガスでの発電量は毎年減少し、一方では、図3に見る通り、デンマークの風力発電の導入は京都議定書の締結後急速に伸びていることが解ります。因みに主催国であった日本について見ますと、地球温暖化ガスの排出量削減義務6%は達成できず、反対に増えました。

 

図2.



図3.京都議定書の締結後、デンマークの風力発電量導入推移

 

デンマーク政府&国民は京都議定書での約束を守るため、風力発電の導入に努め、この図表で見る通り、京都議定書締結後におけるデンマークの風力発電の導入が、急速に伸びていることが解ります。

  緑棒:風力発電設備量(MW)
  赤線:電力供給に占める風力発 電の割合%


 図4.デンマークの家庭における暖房設備推移

上からオレンジ色 その他

       青色  地域暖房

       黄色  天燃ガス

       空色  石油

デンマークが地球温暖化ガスの削減が出来ている背景の第二は、住宅の暖房(給湯)を一括して供給する地域暖房会社を、国の政策として普及させたことだと思います。地域暖房会社が供給するお湯の熱源は、発電所からの熱利用であり、麦わら、可燃廃棄物、ウッドチップなどのバイオマスを燃料としたコージェネ発電所からのお湯であり、そしてまた家畜の糞尿から採りだしたバイオガスが燃料となっています。

この地域暖房の普及策と、住宅の省エネ策の導入(新規住宅の外壁40㎝、床下断熱30㎝、屋根裏断熱40㎝、窓やドアーのU-値は最大でも1.5)が採り入れられてきているためです。

筆者が住む集落でもほぼ100パーセントの住宅及び工場や学校など地域暖房からのお湯が供給されています。熱供給の元になる燃料は天然ガスがベースになっていましたが、デンマークの天然ガスの埋蔵量が減ったため、太陽熱温水器そして今年の秋には麦わらボイラーを導入しました。


2.デンマークのエネルギー政策について
オイルショック後デンマークのエネルギー政策では、原子力発電所の導入も検討しましたが、事故が発生した場合後始末に膨大な費用が見込まること、原子力発電から出る廃棄物処理問題など、導入に対し国民の同意が得られず、1985年3月「原子力発電に依存しない公共エネルギー政策」法案を国会で審議し、賛成79票反対67票で、可決されました。

原子力発電の導入を断念し、デンマークの人たちが採ったエネルギー供給策は、北海油田からの原油と天然ガスの採掘、農地を利用した風力発電導入策、家畜生産国として家畜糞尿を利用したバイオガス生産とコージェネ発電、可燃廃棄物、間伐材や麦藁を燃料としたバイオマスコージェネ発電そして地熱や太陽光発電と省エネ政策でした。この国内資源を活用したエネルギー供給政策から新たな技術開発必要となりこのことで新たな雇用が生まれてきました。何れにせよ、その成果の一つが京都議定書での地球温暖化ガスの削減目標達成であり、エネルギー利用の効率化に繋がりました。


デンマークのエネルギー総供給量は北海油田からの石油と天然ガスの採掘量が2005年をピークに毎年減って来ています。全体のデンマークの供給量が減っている中で再生可能エネルギーからの供給量は増えています。再生可能エネルギーによる供給量は1990年の45ペタジュールから2016年には160ペタジュールと約3.6倍増えました。

 

表2.デンマークのエネルギー供給量推移(2016年暫定値)

 

単位:pj *

1990

2000

2005

2010

2013

2014

2015

2016*

原油

256

765

796

523

373

350

331

298

天然ガス

116

310

393

307

179

173

174

169

廃棄物(注1)

7

14

17

17

16

16

16

16

再生可能エネルギー

45

76

106

131

135

139

155

160

エネルギー供給量計

424

1165

1312

979

704

678

675

643

 

Pj *:石油換算約24,000トン、電力換算約2780万kWh.

(1) 生物的に解体しない廃棄物(可燃廃棄物)

デンマークの人口は毎年増え過去10年間で10万人増えました。デンマークの人口増加については、2016年9月末から017年9月末までの1年間に約33,000人増え、2017年9月末の人口数は約5百77万9千人となりました。人口が増えることで、当然エネルギー消費量も増えると思われがちですが、下記表3、見る通りデンマークではエネルギーの消費量は増えていません。

 

3.デンマークの実質エネルギー消費量推移(2016年暫定値

 

単位:pj *

1990

2000

2005

2010

2013

2014

2015

2016*

石油

343

370

348

316

281

272

279

287

天然ガス

76

186

188

185

138

119

120

121

石炭及びコークス

255

166

155

164

136

107

76

88

廃棄物(注1)

7

14

17

17

16

16

16

16

再生可能エネルギー

45

79

122

168

187

193

206

216

純電力輸入量

25

2

5

-4

4

10

21

18

エネルギー消費量合計

752

816

835

846

762

720

720

749

 

Pj *:石油換算約24,000トン、電力換算約2780万kWh.

 

(1) 生物的に解体しない廃棄物(可燃廃棄物)

 

エネルギーの消費量とGNP生産量の関係を表したのが下記表4ですが、エネルギー生産効率が良くなっています。
表4.エネルギーの生産効率(弾性値)*

単位1990=100

1990

2000

2005

2010

2013

2014

2015

2016

GNP, 2010価格

100

130

139

141

144

146

149

151

総エネルギー消費量

100

102

104

99

93

92

92

95

エネルギー生産効率

100

79

75

71

65

63

62

63

 *生産するに必要とするエネルギー量の割合を表す。

 GNP2000年~2016年 の伸び率:16%、(2016年は暫定値)

  総エネルギー消費量の伸び率:マイナス7

  エネルギーの生産効率:プラス14

 

3.地球温暖化問題について

デンマーク人の中には地球温暖化が進んでいないという人と進んでいるという人が居ます。恐らく日本においても同じことが言えると思っています。地球温暖化が進んでいるか否かへの回答の一つとして、日本における冷房と暖房が必要な日数を調べてみました。温暖化が進めば、冷房日数が増え一方暖房をする日数が減ってくるとみたためです。それに関し以下表5の通りです。
なお、表示数値は「度日」(℃―day)で、意味はインターネットで検索してください。

 

表5.日本における家庭部門の全国平均冷房度日と暖房度日の推移

 

1965-75(1)

2006-2010

2011-2014

増減度日数

  A.

   B.

A.B.

冷房度日(注2

平均 327 

平均420

平均453

プラス126

暖房度日(注2

平均1,211

平均1,041

平均957

マイナス254

冷房と暖房絶対度日数

平均1,538

平均1,461

平均1,410

マイナス128

 

(注1)1965,1970,1973, 1975 年の合計度日数を4年で割った数値
(注2)冷房24℃を超える日の平均気温と22℃との差の合計、暖房14℃を下回る日の平均気温と14℃との差の合計、全国平均は全国9地域(札幌、仙台、東京、富山、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)の人口のよる加重平均値。
出典:エネルギー・経経済統計要覧103~105頁

 

表5で見る通り、約50年間に日本における冷房が必要な度日が増え、暖房が必要な度日が減って来ています。一方冷房も暖房もいらない度日数は128と増えています。このデータから日本の気温は過去約50年の間に上昇したことが読み取れ、また日本の気候は春夏秋冬の四季が崩れて来ていることが解ると思っています。デンマークにおいても同じような傾向にあります。何れにしましても地球の温暖化は進んでいると言って良いと思います。

 

4.洋上ウインドファームについて
デンマークは世界に先駆け1991年、450kW の風車11基を洋上に設置し、その後洋上ウインドファームの増設をしてきました。デンマークの洋上ウインドファーム数は現在13か所に516基の風車が建ち、その発電設備量は約127万1千kWになっています。洋上ウインドファームは風車以外の障害物が無く、安定した風が吹いていることもあり、デンマークにおいては陸内に設置した同じ風車の発電量に対し、洋上ウインドファーム発電量は平均82%と多くなっています。そのような理由もあり、デンマークの洋上ウインドファーム516基(一基当たりの平均設備量2.64MW)の発電量(2016年)はデンマークの風力発電総量127億3300万kWhの約35%に当たる約45億kWhと言われています。
世界における2016年末の洋上ウインドファームの設備量は、1438万4千kWで2015年末に比べ約220万kW増えました。デンマーク以外の国で洋上ウインドファームに力を入れているヨーロッパの国ではイギリス、ドイツそしてオランダです。図5は世界の洋上ウインドファームの設備量で、2011年から2016年累積発電設量の推移と、国別に見た2015年と2016年の発電設備量です。

 

図5.国別に見た洋上ウインドファーの発電設備量:単位MW

        全世界における洋上ウインドファーム設備量の推移:

                  2011年4,117 MWに対し201614,384MW3.5倍増えた。

欧州諸国における風力発電導入の増加にともない、欧州諸国間の系統連係の整備が進んでいます。今年(2017年)10月30日デンマークエネルギー大臣が、国営の系統連係会社Energinet社*とイギリスのナショナルグリット社との間の海底ケーブル敷設工事を認可しました。この工事はバイキングリンクと呼ばれ、二国間の海底ケーブルの長さは770キロメートルで、工事費110億クローネ(約2千億円)見込み、完成は2020年と言われています。


*Energinet 社:創業2005年、デンマークの電力会社を統括し、エネルギー供給と気候大臣が監督する国家の直営機関( (Energinet.Dk)。2016年現在、同社の職員数は900名、2015年の売上高は120億クローネ(約2000億円)でした。高圧送電線網7060㎞保有し、ガスパイプ924㎞の運営管理、ガス貯蔵庫ユトランド半島とシェーランド島に各1か所づつ運営管理をしている。


図6はデンマークと欧州間における系統連係図ですが、赤線は既に系統連係が出来ているもの、緑線は工事中のもの、黄緑が計画中のものです。この内のViking linkの工事が今年10月30日に決まったということです。Viking link 敷設工事費110億クローネは電力料金に上乗せすることで賄うとしています。何れにしても欧州諸国間における系統連係の増設と強化によって、欧州間における風力発電を含めた電力供給が容易になることだけではなく、デンマークのように風力発電に力を入れている国にとっては大きなプラスになるとみています。理由は不安定な風力発電へのバックアップとして、化石燃料による発電所の稼働必要はなくなると見ているためです。

図6.デンマークと欧州間の系統連係図

●Kriegers Flak 洋上ウインドファーム  2017年8月43.5㎞のケーブル敷設工事完了、風力発電機72基(計600MW2022年起動予定. 入札価格0.372kr/kWh(6.7/kWh.)

●Viking link 長さ770㎞ 容量1400MW

赤のライン:既存

緑のライン:工事中

黄緑のライン:計画中 

5.大企業におけるデンマーク支社建設について
京都議定書の地球温暖化ガスの削減の約束を守ったデンマーク、その後も継続し地球温暖化ガスの削減に取り組んでいるデンマークのエネルギー政策の姿勢が、世界の大手企業のデンマークへの投資に繋がっています。


三菱重工とデンマークの風力発電機メーカーVestas社は2014年4月1日に資本金1億4400万ユーロ(約190億)で洋上ウインド会社「MHI Vestas Offshore Wind A/S」設立しました。従業員数約380人でスタートした会社ですが、創立後3年経った今日、従業員数は2100人に増大し、同社が開発した8,000kW (8MW) は大変好評で、欧州の洋上ウインドファームの入札で競り勝ったプロジェクトの機種の大半はMHI/Vestas社の8MWと言われいます。そんなことで、これからの
同社の業務活動に注目したいと思っています。


アップル社は、デンマークの中部ユトランドにある、田舎町チレーレ(Tjele)にデータセンターの建設を決め、欧州の顧客サービスへの充実をはかるとしました。建設計画によりますとデータセンターの規模は16万6千平方メートル(16.6ヘクタール)で既に工事に入っています。アップルがデンマークを選ん理由として、建設地にノルウェーの水力発電所と結ぶ直流の変電所があること、再生可能エネルギーからの供給電力のみで営業が可能であること、データセンターが放出する熱は村の地域暖房会社に供給できることなどです。アップル社が見込む年間の電力消費量は700GWh (7000億kWh)と言われ、大口の電力消費者となるだけに、デンマークの再生可能エネルギーの売電価格が改善されるのではないかと期待し、また、アップルのデータセンター開設によって、新たな雇用が生まることも期待されています。


Google社のデンマークのデータセンター計画、グーグル社は欧州におけるデータセンターの拡張の一環としてユトランド半島の中東部の都市フレデイシア(Fredericia)に73.2ヘクタール土地を6500万クローネ(約13億円)で購入したと、今年2017年6月に発表しました。具体的建設計画は出ていませんが、将来のデータセンターの建設地に充てると推察され、新たな雇用が生まれると見込んでいます。


Facebook社は2020年を目標にオーデンセ(Odense)にデータセンターを開設すること発表しました。この他に、アメリカの会社TPI Composites Inc.(風車の羽根の心棒メーカ―)はデンマークのユトランド半島中部のコーリング市に(Koldning)に来年(2018年)を目標に同社の研究開発及び技術センターを開設すると発表しました。風力発電機の大型化が進む中でブレード(風車の羽根)も長くなり(MHI&Vestas風車8MWの羽根の長さ80メートル)、強度などの研究開発が必要だと見たためだと思います。


デンマークはオイルショックの教訓をもとに、国内エネルギー資源の活用に努め、COP3京都会議で約束した地球の温暖化ガス削減政策など導入してきた結果、デンマークのエネルギー技術と機器の輸出額が2000年頃から急増しています。図7で見る通り、2015年全輸出額の10%強がエネルギー技術と機器の輸出額になっています。今後上記で記載した大企業のデンマーク支社開設に伴いさらなる輸出増大が期待できるのではないか、と筆者はみています。

図7.デンマークのエネルギー技術と機器の輸出額と総輸出額に占める割合の推移:

    単位:輸出額10億クローネ(約170億円) 

    緑線:総輸出額に占めるエネルギー技術と機器(風力発電機など)。
         1996年:約150億クローネ(約2,550億円)
         2015年:約710億クローネ(約1.2兆円)
参考:
デンマーク一人当たりの輸出額*(2015年)約112,000kr.(約190万円、日本一人当たり約59万円)。*総輸出額6,350 億クローネ/人口566万人、一人当たり、112,000クローネ。日本人の約3.5倍

 

6.国外からの労働人口について
デンマークは労働人口不足であるため、EU諸国及び諸外国から多くの就労者が入っています。今年8月時点においてデンマークで働いている外国人の数は約20万人で、デンマークの労働人口数の約9パーセントが国外からの労働人口と言われています。外国人労働者の多くは、土木や建設などに雇われる主にEU諸国からの労働者ですが、高学歴の人たちも多く入って来ています。高学歴を持つEU諸国からのデンマークで働く人たちの多くはドイツとイギリスが多く、EU以外の国からではアメリカ、インド、中国そしてパキスタンからの外国人でこの中でもインド人の占める割合は60パーセントと言われています。
世界銀行によるとデンマークはヨーロッパ諸国内で最も企業運営に適した国*と言われています。デンマークでは起業する手続きが容易で、職種別労働組合が確立しているので外国の労働者でも、労働条件が守られる制度になっていることから、安心して働ける国であるためだと思います。

*世界の中で最も企業運営に適した国はニュージーランド、その次はシンガポールで三番目がデンマークで、評価条件として10項目あり、この中に起業手続、建築許可、不動産登録、納税などの手続きにかかる業務の容易度が評価になっています。
デンマークの企業が国外の高学歴の人たちを雇用する場合(Fast-Track 制度)、最低賃金は年間408,800クローネ(約7百万円)をデンマーククローネでデンマークの銀行口座に払い込むこと、最低賃金の他に雇用者は、労働市場年金、休暇手当を負担すること。家賃や食費代、電話、車、インターネット回線料など賃金の中に含めないこと、の条件があり、この条件を満たせない企業における高学歴の外国人の雇用を、デンマーク政府は認めないことにしています。この背景にはデンマークの人件費は近隣諸国*に比べても高く、デンマークで年収450,000クローネ(約8百万円)以上の所得を得ている就労者数は約50万人(労働人口約20%)と言われ、デンマークの企業が国外から安く高学歴者を雇用することを労働組合は受け入れないことがあります。それによって、デンマークでは被雇用者に高い給与を払うことで、購買力も納税額も増え、国家運営上大きなプラスになっているようです。


* 2008 年数値で大変恐縮ですが、EU諸国内の時給換算①デンマーク35.2ユーロ、②スウエーデン31.6ユーロ、③ドイツ28.9ユーロ、④イギリス21.1ユーロでデンマークが一番高く、また最低賃金について見ますと、デンマークは職種による労使間協定で賃金を決めているため最低賃金制度は導入されていませんが、最低額の時給を見ますと、2017年未熟練工(資格のない労働者)として建設現場で働く作業員の時給は約15.6ユーロでドイツの最低賃金(2016年)8.5ユーロ、イギリスの9.23ユーロに比べても高くなっています。参考までに日本の最低賃金は2016年に改善され時給823円となっていますが、デンマークの最低賃金15.6ユーロを円換算しますと時給で約2,075円となり、デンマークの時給は日本の2.5倍となります。

 

                      (了)
2017年12月