風のがっこう便り2009年12月

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① 再生可能エネルギーに力を入れるデンマークの市町村  

2008 年 11 月 26 日の地方紙(注)によると、中部ユトランド地区にはエネルギー供給量の 40~ 45%を再生可能エネルギーで賄っている市町村があると報じています。この新聞報道では中部ユト ランドにおける一人当りの二酸化炭素排出量は平均 7.3 トンに対し、ヘアニング市とストロー市で は 5 トン、ホレステブロー市とレンビー市では約 6 トンとなっていると伝えています。中部ユトラ ンド地方は 2030 年に向け、全エネルギー消費量の 50%を再生可能エネルギーで供給することを目 標にし、レンビー市(Lemvig)の場合、風力発電に力を入れ, ホルステブロー市(Holstebro)では バイオガスプラントに力を入れる、と伝えています。(注)Dagbladet Hostebro, Struer 

表1.デンマークの中部ユトランド地区における市町村の第一次エネルギー消費量に占める 再生可能エネルギーの割り合い(2007 年) 

市町村名 

人口数

Holstebro 

約 57,000 人

Struer 

23,000 人

Lemvig 

22,000 人

Herning 

84,000 人

Region Midt (注)

Danmark 545 万人

風力 

6 % 

10.6% 

20.6% 

6.5% 

4.3% 

3.0%

麦藁 

6.6% 

6.6% 

1.0% 

2.3% 

3.9% 

0.7%

木材 

9.2% 

10.5% 

17.1% 

25% 

11.2% 

5.2%

バイオガス 

0.1% 

0.4% 

1.9% 

2.2% 

0.4% 

0.1%

バイオ廃棄物 

22.6% 

12.3% 

2.3% 

4.2% 

4.6% 

7.9%

再生可能 

エネルギー計

44.6% 

40.5% 

43% 

40.2% 

24.5% 

16.9%

(注)中部ユトランド地区の人口は約 124 万人、13 市町村の平均値 

この中部ユトランド地区に所在する市町村は地元のエネルギー資源を利用し住民のエネルギーの自 給化を図るだけでは無く、住民がこれらのプロジェクトに出資することで、売電収入や安い熱量の 供給を受け、その結果として町や市の活性化につなげています。この中には、農家が発電所や地域 暖房会社に麦藁を売却し、農家の副収入に繋げているのも一つの例です。 

② デンマークの再生可能エネルギーの導入状況と買取価格について 

デンマークの風力発電は 2003 年 1 月 1 日から市場価格にもとずいた売電価格制度の導入によって、 新規の風力発電設備への投資がほぼゼロになっていました。2007 年末デンマークに設置されてい る風車台数は 5,212 基で総発電量 3,124MW,に対し 2008 年末における設備量は 5,177 基の 3,180M Wと基数は減りましたが、出力で僅かの伸びとなっています。デンマーク政府(自由党と保守党の 連立政権)は安い売電価格が風力発電及びバイオガスプラントの導入促進にブレーキがかかってい ることを認め、2008 年 2 月 21 日風力発電とバイオガスプラントからの売電価格の見直しをしまし た。その政策によると、まず導入計画においては、2008 年~11 年までにデンマークの総エネルギ ー消費量の 20%を再可能エネルギーで賄う計画を立て(今日の 17%)、売電価格については、 2008 年2月21日以降に系統連系した風力発電機には市場価格に炭素税の中から 0.08 クローネ (12000 時間までと解体証明書を使った場合)上乗せし、また電気税の中から 0.25 クローネ(22 000 時間まで)上乗せすることにしたのです。この政策導入によって、現在の売電価格の天井額 0.36 クローネに対し、これから系統連系する風力発電の売電価格が大幅に増えることになったこと です。バイオガスプラントからの売電価格は現在の平均キロワット時当り 0.6 クローネに対し、今 後は 0.75 クローネに引き上げました。

 

③ 世界最大の洋上ウインドファームを所有するデンマーク 

表 2.2009 年 3 月現在と 2012 年末における洋上ウイドファームの設置年と設備量(見込み) 

ウインドファーム名 

設置年 

基数 

1 基当りの 

出力(kW)

発電設備量計 (kW)

1. Vindeby 

1991 

11

450

4,950

2. Tunø 

1995 

10

500

5,000

3. Middelgrund 

2000 

20

2,000

40,000

  4. Horns rev I 

増築済み(注)

2002 

2009

80 

91

2,000 

 2,300

160,000 

 209,300

5. Rønland 

2003 

8

2,150

17,200

  6. Nysted

増築決定(注)

2003 

2010

72 

90

2,300 

 2,300

165,600 

 207,000

7. Samsø 

2003 

10

2,300

23,000

8. Frederikshavn 

2003

3

2,533

7,600

9. Avedøre Holm 

2009 

2

3,600

7,200

10. Avedøre Holm 

2010 

1

3,600

3,600

11. Sprogø 

2009 

7

3,000

21,000

12. Frederikshavn 

2009/10 

6

機種未定

未定

13. Anholtparken 

2012 

未定

機種未定

400,000

合計(2010 年末) 

 

411 

平均 2,126

871,450

2012 末 合計(見込み) 

     

1,270,000

 

表3.デンマークの洋上発電所の発電量 

ウインドファーム名 

年間見込み 発電量

風速調整後 年間発電量

設備利用率 (注 1)

陸内設備 

との比較(注2)

1. Vindeby 

1,237MWh 

11,256 MWh

0.26%

117%

2. Tunø 

12,500 

14,201

0.32

146 

3. Middelgrund 

93,660 

101,827

0.29

131

4. Horns rev 

600,000 

688,440

0.49

221

5. Rønland 

80,886 

70,587

0.47 

211

6. Nysted 

596,000 

644,099

0.44 

200

7. Samsø 

77,650 

85,978

0.43 

192

8. Frederikshavn 

24,000 

20,674

0.31 

140

合計 

1,495,933 

1,637,061 

平均 0.44 

平均 199 

(出典:Naturlig Energi, maj 2009 s.23) 

(注1)設備利用率=総発電量/出力×年間時間(8670 時間)×100 

例:上記1Vindeby ウインドファーム発電量 11,256MWh/4950kW×8760 時間×100  =25.96 % 

(注2)陸内に同型の風車を設置した場合の発電量との比較 

(注):設置場所はユトランド半島西海岸から 30km離れた北海で、設備量は全部で 209,300kW(2.3M W×91 基)で工期は 2008 年 5 月から始め、2009 年4月からナセルの設置開始 9 月完了。この洋上ウイ ンドファームによる発電量は 20 万世帯分の電力消費量に当たる約 8 億kWhと見込まれ、総工事費は 40 億クローネ(約 800 億円)と云われている。プロジェクトの名前は Horns Rev II, この洋上ウインドファー ムは 2002 年に設置された Horns Rev I (2MW×80 基)と同じ海域にあり、その間の距離は約 20km離し ている。 バルト海に設置するRødsand II というプロジェクトは、ローランド島から南に位置し、2003 年に設 置されたRødsand I (2.3MW×72 基)から3km離れた場所に 2.3MW×90 基計 207,000kWの設備を2010 年の完成を目標とし、工事に入っている。 この 2 ケ所の洋上ウインドファームに使われる風車は元 ボーナス社、現シーメンス社製の風力発電機となっている。 

④ ドイツ、デンマーク、スウエーデンの三国間を結ぶ大規模洋上ウインドファームプロジェクト バルト海に面したドイツ、デンマーク、スウエーデンが洋上ウインドファームを建設するための海域を「Kriegers Flak」と 呼んでいますが、EU は同プロジェクトに対し送電用ケーブル費として1億 5 千万ユーロ(約 200 億円)補助金を出 すことにしました。 このウインドファームは 2020 年までに EU 諸国の電力供給の20%を風力発電で賄うという政 策の一環から出たもので、この計画では 2020 年までにこの海域に1800MW 風力発電機を設置し、200 万世帯 の電力消費量を供給すると伝えています。 

⑤ 世界中から投資出来るデンマークの市民風車に関して 

 2009 年秋、デンマークに世界中から投資できる「市民共同所有風力発電」が設置されました。 その設備内容と投資額に関しては以下の通りです。 

投資機種:シーメンス(元ボーナス社)3.6MW 

ハブの高さ:93.5m 

ローター直径:120m 

羽突端を含めた高さ:155m 

風車本体価格: 5、210 万クローネ(本体価格には 5 ヵ年間のサービスメンテ費用込み) 保険料・工事費など: 135 万クローネ 

風車投資総額: 5、345 万クローネ(約 11 億円) 

見込み発電量: 1、070 万kWh.(約 2100 世帯の電力消費量に当たる) 

総口数: 10,700 口 

一口当りの単価: 5345 万クローネ/10,700 口=4,995 クローネ(約 10 万円) 

売電収入(年インフレ2%込み)一口当り 

投資年 1 年~6年: デンマーク政府は定格出力 22,000 時間(約 6 年間稼動)までの売電について は 1 キロワット時当り 0.25 クローネの助成金を出すことになっている。一口当りの見込み売電収 入: 

 売電収入 640 クローネ 

 運営管理費 107 クローネ 

税込み売電収入: 533 クローネ 

税込み投資利回り: 533/4,995=10.67% 

この後の売電価格は市場価格によりデンマークの過去の実績では1kWh当り 0.3~0.54 クローネ。よって、投資額全額が償還出来るのは稼動後 11 年目としている。

 ⑥ デンマークと日本の比較から 

表4.デンマークと日本の一人当りのエネルギー消費量の比較と推移。

  参考GNP   単位:石油換算 kg。 単位:10 億米ドル 

エネルギー消費量

1990 年 

2006 年 

伸び率 

参考)

GNP 

1998 

2008 

伸び率

デンマーク 

3,486 

3,850 

10.4% 

デンマーク 

174.0 

342.9 

97.1%

日本 

3,593 

4,129 

4.9% 

日本 

3,872.0 

,923.8 

27.2%

(出典:Statistisk Tiårsoversigt 2009, s.166、s.174 )

上記表4で見る通り、デンマークと日本を比較して感じたことは、国民総生産の伸びに対し、 日本のエネルギー消費量はデンマークに比べ大幅に増えているということです。その結果、 下記表5に見る通り二酸化炭素の排出量も増えているということです。日本の人達はこの関係を改善しないと、今後さらに生活が厳しくなってくるということがこのデータから読み取 れると思います。 

表5.デンマークと日本の一人当りの二酸化炭素排出量の比較と推移。 

             単位:トン 

 

1990 年 

2006 年 

伸び率

デンマーク 

9.7 

8.5 

-12.4%

日本 

8.7 

9.6 

+10.3%

 (出典:Statistisk Tiårsoversigt 2009, s.166) 

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2010 年における訪日予定のお知らせ: 

  第 1 回目 2 月 23 日~5 月 14 日 

第 2 回目 7 月下旬~9 月下旬 

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