総選挙の結果、暖房エネルギー供給、他(20221110)

1.  デンマークの総選挙の結果について

11月1日(火)にデンマークの総選挙がありました。前回の選挙は2019年6月5日(水)で任期は4年です。任期終了に達する7カ月前に選挙を実施したのは、社会民主党の政権に対し、社会民主党の政権を支持して来た社会自由党が今年の夏(2022年8月)、10月2日における国会開催までに内閣解散を実施しない場合は不信任案を議会に提出すると発表しました。そのことを踏まえ, 社会民主党首相のメッテ・フレデリックセン(  Mette Frederiksen *)首相は10月5日国会を解散し、11月1日に総選挙することを発表しました。デンマークの国会の議席数は175席、それにグリーンランドとフェロー諸島から各2席、計4席を加え179席がデンマークの国会議員の定員数となっています。

* Mette Frederiksen:  1977年11月19日生まれ(44歳)学歴はオルボー大学で行政と社会学を学び(学士)その後コペンハーゲン大学のアフリカ研究修士課程修了。政治歴は、1992年15歳で社会民主党ジュニアクラブ入党し2001年24歳で国会議員に初当選、以来今日に至るまで社会民主党議員として21年間就任、この間、雇用大臣職(2011‐2014年)法務大臣職(2014-15年) に就いた。二児の母親。

 

表1デンマークの2022年11月1日の総選挙の結果と前回(2019年)の選挙との比較

  投票率:84.1% (2019年84.5%)

政党名

取得席数

2019

獲得投票率

2019

社会民主党

Socialdemokratiet

50

+2

27.5%

+1.6%

急進党

Radikale

7

-9

3.8%

-4.8%

自由党

Venstre

23

-20

13.3%

-10.1%

保守党

Konservative

10

-2

5.5%

-1.1%

新人民党

Nye Borgerlige

6

+2

3.7%

+1.3%

社会人民党

Socialistisk Folkeparti

15

+1

8.3%

+0.6%

民主同盟党

Liberal Alliance

14

+10

7.9%

+5.6%

穏健党 (1)

Moderaterne

16

+16

9.3%

+9.3%

デンマーク人民党

Dansk Folkeparti

-11

2.6%

-6.1%

デンマーク民主党(注1)

Danmarksdemokraterne

14

+14

8.1%

+8.1%

赤緑党

Enhedslisten

9

-4

5.2%

-1.7%

緑の党

Alternativet

6

+1

3.3%

+0.3%

合計

175

 

 

 

(kilde :Kristelig Dagblad Torsdag 3.november 2022)

(注1) この政党は自由党から離脱した議員が、2022年の夏に創立した政党で2019年の選挙の実績はない。

 

総選挙から10日過ぎた今、どの政党が政権を採るか、現首相のフレデリックセンが陣頭に立ち、政権を確立するため、政党間との間で交渉を進めています。総選挙に先立ち、フレデリックセン首相はデンマークが抱える大きな問題(注2)を解決するためには選挙後の政権は左派と右派との同盟が必要と訴えての選挙で、結果としてフレデリックセン首相と社会民主党の支持が前回の選挙に比べ増えました。この先、どのような政党間での政権が誕生するか、未定ですが、フレデリックセン首相が継続することは間違いないと思っています。第二次フレデリックセン政権が誕生次第報告します。

 

(注2)デンマークが抱える大きな問題とは、エネルギー価格の高騰による物価高への対策、労働者人口不足、特に看護師、精神科医不足で治療を待つ患者が増大していることへの対策、ロシアのウクライナ侵攻における国防対策など、一つの政党だけでは解決できないため、フレデリックセン首相は右派・左派含めた幅広い中道の政権確立を求めている。

 

2. デンマークの暖房エネルギー供給について

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、EU諸国のロシアの天然ガスからの離脱策、水不足による水力発電所の電力供給不足などの影響を受け、デンマークにおける熱及び電力の値段が急騰しています。デンマークの議会は、エネルギー価格の急騰による生活困窮者に対し、今年の8月(2022年)6千クローネの支援策を実施しました。支給に当たり、受けられる世帯への条件は以下の通りになっていました。

 

支援が受けられる条件:

①       2020年の所得が65万クローネ以下のガスボイラーによる世帯

②       地域暖房の熱源のガスの占める割合が多く2020年の所得が65万クローネ以下の世帯

③       熱ポンプや電気での暖房に依存する2020年の年収65万クローネ以下の世帯など、で

国家全体でこれらの条件を満たす世帯数に対し一世帯当たり6千クローネ支給しましたがその数は40万世帯と言われています。

熱量や電気の値上がりが結果として物価高を生み、物価高を助長させないための政策としてデンマーク政府・議会は最小限の支援策を採っているように思えます。

デンマークの2022年1月から6月までの半年間における風力発電と太陽光の発電量は電力消費量の53.3%に当たる約110億キロワット時になり2020年の52.9%の記録を更新したと2022年8月9日共同通信が発表ました。

デンマークには現在233か所に地域暖房事業団体がありますが、その団体の発表によりますと、天然ガスから地域暖房に切り替える人達が増え、2021年天然ガス暖房から地域暖房に切り替えた消費者数は11,000件と言われ、2022年のそれはその倍の2万件に上ると語られています。その結果、地域暖房事業者では地域暖房の増設に必要な暖房管、断熱材などの材料不足が語られています。デンマークの地域暖房の熱源の一つは可燃廃棄物の燃料化でデンマークの廃棄物を燃料としたコージェネ発電所による地域暖房への供給率は全デンマークで25%と言われています。地域暖房の熱源としてデンマークはEU諸国から可燃廃棄物を年間約36万トン輸入しています。背景には欧州諸国において廃棄物処理政策が追い付いて行けないため、毎年約55万トンの家庭及び業界からの廃棄物が埋め立て処理されていると言われています。そんなことからデンマークが欧州から廃棄物を引き取り、燃料化をすることによって、化石燃料を節約し、また廃棄物の引き取り代を取ることによって、コージェネ発電の生産価格を引き下げる効果に繋げています。

 

3.デンマークの首相、大臣及び局長の年収額について

2022年11月1日の新聞(Jyllands posten)にデンマークの大臣や官僚の給与額が記載されていました。同新聞記事によりますと、以下の通りです。

首相:年間税込み 170万クローネ (1クローネ約19円)(注3)

財務大臣:年間税込み 150万クローネ

外務大臣:年間税込み 150万クローネ

その他の大臣:年間税込み 130万クローネ

国会議員:年間税込み 713,000クローネプラス諸経費手当年間7万クローネ。

デンマークの給与所得者の年金の積み立て金を含めた平均給与額は53万4千クローネからして国会議員の年収はそれほど高額ではないと思えます。

国会議員とは別に官僚で最も高い年収を得ているのは、

総理省局長で(2021年)税込み280万クローネ、次に多いのは財務省局長で年間税込み270万クローネ、三番目に多いのは産業省局長で年間税込み250万クローネとなっています。そして国会の議長職の年収は税込みで首相と同じ170万クローネとなっています。

 

(注3) デンマークの政治家の給与額が多いか少ないか、参考までに日本の政治家の年収を見ますと内閣総理大臣の年収は4,049万円、国務大臣2,953万円、副大臣2,833万円などになっています。国会議員の年収は約2,200万円です。一方日本の給与所得者の男女の平均年収は(2020年)433万円となっており、日本の国会議員の年収は給与所得者の年収平均の約5倍となっています。

 

デンマーク、ウアンホイにて

2022年11月10日

 

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