地球の気温上昇とその対策について(20240806)

 ①  地球の気温上昇について

毎年、地球温暖化が語られるなかで、地球の気温がどの程度上昇しているのか、参考として過去50年(正確には52年)の札幌、東京、大阪、福岡の4か所における6月から10月までの月別平均気温と年間平均気温を書き出してみました。

札幌の気温

6

7

8

9

10

年平均

1972

14.4

19.0

20.3

15.6

10.5

7.6

2001

16. 1

20.2

21.7

17.2

10.8

8.5

2023

17.0

21.2

22.3

18.6

12.1

9.2

 

東京の気温

6

7

8

9

10

年平均

1972

21.3

25.8

26.7

21.1

15.5

15.0

2001

21.7

25.2

27.1

23.2

17.6

15.9

2023

21.9

25.7

26.9

23.3

18.0

15.8

 

大阪の気温

6

7

8

9

10

年平均

1972

22.3

26.9

27.4

23.3

16.6

15.6

2001

23.0

27.0

28.2

24.2

18.3

16.5

2023

23.6

27.7

29.0

25.2

19.5

17.1

 

福岡の気温

6

7

8

9

10

年平均

1972

22.8

28.2

26.6

23.2

17.1

16.1

2001

22.3

26.9

27.6

23.7

18.2

16.6

2023

23.3

27.4

28.4

24.7

19.6

17.3

(出典:日本統計年鑑、197245頁、200122ページ、202326ページ)

 

2024731

最高気温

最低気温

札幌

26

21

東京(千代田区)

36

28

大阪(大阪市)

36

28

福岡

35

28

 

 

(出典:ネット情報)

上記の表で見る通り、札幌の年間平均気温は1972年から2023年の52年間おいて7.6℃から9.2℃に上昇したことが解りました。東京は15.6℃から15.8℃大阪は15.6℃か17.1℃、そして福岡は16.1℃から17.3℃に上昇したことが、左の表で見ることが出来ます。何れにしましても地球の温度が確実に上昇していることです。

日本の報道では「異状気象」―まれに発生する気象―という表現が使われていますが、今日において地球の気温上昇は「異状」という言葉は適切ではなく、確実「地球温暖化」という表現が適切と思っています。

これから10年、あるいは20年先の気温がどの程度上昇するか、見当がつきませんが、平均値は下がることはないと見たらよいと思います。

2024731日の東京、大阪の最高気温は36℃記録していますが、このような気温が毎年何日間続くのか気になるところです。

  

   ②  温暖化対策について

地球の温暖化の原因は、温暖化ガスと呼ばれている二酸化炭素(CO2)、メタンガス(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロン(NF3)の排出が主と言われ、特に二酸化炭素の排出に関しては1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)において、1990年を基準値に対し2008年~12年の間に各国の削減目標が約束されました(EU8%削減,デンマークは21%)。この約束を守るため、デンマークでは化石燃料での電力供給を風力、バイオマス、バイオガス、そして太陽光など再生可能エネルギー資源を利用することにしました。結果2022年におけるデンマークの再生エネルギー資源による電力供給源の割合は国内電力消費量に対し、81.4パーセントになりました(20240605参照)。また、エネルギー消費における二酸化炭素の排出量は1990年の基準値100に対し2022年までに約40.3パーセント減らしました。

 

1は(新聞からのコピーで判読しづらい)デンマークの市町村別に見た、再生可能エネルギーの導入実績(割合)です。

図1

 

緑色/灰色

CO2/kWh

最も濃い緑色

0

 以下

1-10

 

11-25

 

26-50

 

51-100

灰色

101-150

最も濃い灰色

151-250

Kilde: Herning Folkeblad 3.juni 2024

1はデンマークの「緑の電気」を利用している98の市町村のデータです。緑色の濃い順から電力供給における二酸化炭素の削減量を表し, kWh 当たりの二酸化炭素量が100グラムを超えた市町村の色は「灰色」になっています。

図1で電力供給で最も二酸化炭素が少ない市町村はLolland 島でkWh当たりの二酸化炭素量は10グラム、次がLemvig 市の16グラム、Randes22グラムと続いています。一方、電力供給で最も二酸化炭素を排出している市はHosenns市でkWh当たり128グラム、Frederica127グラム, Faaborg-Midtfyn119グラムとなっています。デンマークでは二酸化炭素削減における実務事務は市町村行政の責任となっており、「緑の電気」の占める割合が多い市町村は都市計画の中で積極的に「緑の電気」の供給手段をの採り入れたためです。例えば、Lemvig 市、デンマークの強風地帯でもあり、酪農も盛んな場所ですが、長年風力発電の導入を勧め、バイオガスプラントも導入し、さらに世界最大の風力発電機の設置も許可しました。(20240505参照)

 

    ③ デンマークが選択した電力供給手段について

国々によって地球の温暖化防止対策と電力供給の手段については異なりますが、デンマークが選んだ電力供給体制は次世代に負担のかからない発電設備です。

2は今日の電力供給設備別に見た発電価格で、1MWh1000kWh)当たりの発電価格で単位はユーロです。発電価格は左から原子力発電、石炭火力発電、天然ガス火力発電、太陽光発電、洋上風力発電、陸内風力発電の順ですが、一番安いのは陸内に建てた風力発電で1MWhの発電価格は46ユーロになっています。

 

デンマークの陸内に建っている風力発電機の発電量について例を挙げます。1999年に筆者が住む市内に建てた600Wの風車が1昨日(2024730)売りに出ました。風車の売却資料によりますと、風車が建っている土地の面積は約370m2で起動は199912月です。起動年の1999年から2023年まで発電量の累積は約2470万kWhで、この約24年間における年間平均発電量は約103万kWhと書いていました。デンマークの一般家庭の年間電力消費量は約4500Whからして600W風車1台で約220世帯分の電力量を僅か370m2112坪)の土地を利用し、燃料費代無しで確保したことが解ります。しかも発電に伴う廃棄物はぜロです。この風車の売値(最低価格)は215万クローネ(約4800万円)と書いていました。デンマークが地球温暖化防止策として二酸化炭素の排出量を削減する手段の一つが、地元のエネルギー資源を使った風力発電です。風車に投資した人も売却資料で見る限り、会計報告書は見ていませんが、投資損はないと見ています。

図2.

 

 

 

 デンマークの国土面積は、九州と山口県を合わせた約43,000㎞2(北海道の約半分)です。2022末時点で6,271基(内洋上630基)の風車が建ち、これら風車の発電設備量は約7000万kWになりました。これらの風車がフル稼働しますと当然デンマーク国内では消費しきれないため、隣接する国外に送電しています。図3がデンマークが結んだ系統連系図です。風力発電以外に太陽光発電、バイオガス、バイオマス発電設備がありますが、これら電力の送電を運営管理するため、2004年デンマーク政府は国営の送電会社Energinet社を創設しました。現在の職員数約2,000人ですが、デンマークが系統連系している国々との電力の動きを常時監視しています。例えば2024年8月1日12時23分時点におけるデンマークと隣接国との電力供給量について見ます。(インターネット上で常時閲覧できる、アクセスenerginet.dk, energisystemet lige nu)

 

(出典:ネット情報)

デンマークと隣接国との電力供給実態(例)

2024811223分時点

ユトランドからイギリス999MW

ユトランドからオランダ 700MW

ユトランドからドイツ 417MW

ノルウェーからユトランド 1,631MW

 

スウエーデンからユトランド 715MW

デンマークが地球温暖化防止として、二酸化炭素の排出をしない発電設備に力を入れた他に、オイルショックの教訓を活かし住宅の断熱に努めてきました。現在デンマークの住宅の建設基準(最低)は、外壁の厚さ43㎝、床下断熱40㎝、天井断熱40㎝と語られています。筆者が住む集落に建てられた介護センターの外壁は63㎝となっていました。窓やドアー枠は木材又はプラスチックを使い窓やドアーの板ガラスには断熱剤入り最低二枚保温ガラス使うことになっています。デンマークでアルミサッシを使わないのは熱の伝導が著しく、省エネにならないためです。

今日デンマークの住宅や工場の建物で一枚ガラスを使った窓やドアーはゼロとみて良いと思います。デンマークの気候は、北西からの風の影響が多く、夏場でも30℃を越えることは稀です。この先もグリーランドや北極の氷が融けることで、海水温度も上がらないこともあり、デンマークは夏場でも猛暑になることはないと、筆者は推測しています。今年2024年の6月と7月におけるデンマークの日中気温は17℃前後で涼しい夏場を過ごしています。この涼しい夏場のデンマークには新たに南の国々からの観光客あるいはアメリカからの観光客が増えています。欧州からの観光客の多くはキャンピングカーを使い週単位で訪問してくるため、海岸線を持つデンマークの市町村はその受け入れに駐車場(キャンプ場)の整備、「夏の家」の増築に努めています。

デンマークにおける地球の温暖化防止への施策は、結果としてデンマークに新たな産業を生み(風力発電機メーカー、住宅産業、バイオガス、バイオマス産業、地域暖房会社など)、経済の活性化と共に国民生活が豊かになり、また快適になってきています。

202471日の新聞(Kristeligt Dagblad)でデンマーク人は西欧諸国内で最も「楽天家」(表現が適切ではないかも)だと報じられていました。報道の背景となった調査は欧州の7か国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウエーデン、イギリス)とアメリカの国民に対し「国の状態をどう思っているか」を問った結果として、調査に協力したデンマークの人たちの68パーセントの人たちは「国の状態は良い」と答えていました。調査の中でもっとも憂いているはイギリス人で調査に協力した80%の人達が国の成り行きを懸念し、以下フランス人の71%、ドイツ人の70%、アメリカ人の63%人、が国の状態を憂ていると報じていました。

 

   ④  日本の温暖化への予防策について

今後とも地球の温暖化が進むことを念頭に置き、猛暑からいかにして生活環境を守るかは、国の政治・行政そして国民全員に課せられた課題だと思います。日本において、この先何年も夏場は30℃を越える日々が続くことを想定し、それに伴い冷房が必要な日数も増えるはずです。どのような対策を採るべきか、対策を採るためには全国の冷却に必要な電力量の把握が必要です。電力量の把握には室内温度を何度に設定するか、どの程度の面積を何時間冷却する必要があるのかなど、条件を定めることが必要です。そしてその必要な電力量をいかにして供給するのか、発電価格の安い順から発電設備を増設することではないかと思います。その判断基準の中に国内の資源である廃棄物、バイオマス、バイオガス、風力、太陽光などの活用に力を入れことで国外からの火力発電所の燃料を減らすこと、それによって外貨を節約すると共に国内産業の活性化に努めることではないかと思います。発電と送電を分け、発電する電力の送電は各電力会社に任せず、国が送電事業を受け持つことだと思います。住宅の省エネ対策として、熱伝導が大きいアルミサッシの窓やドアーを制限し、また、住宅の外壁や屋根裏や床下の断熱を高めることだと思います。これらの事業に掛かる費用への補助金は、現在国の予算として使われている例えば、エネルギー対策特別会計予算(目的、産油国への協力費、天然ガスの開発費)や電源立地交付金として充てられて予算を国内の電力供給に向けた設備投資にシフトすることだと思います。

日本の国の財政は恒常的赤字財政を組んでおり、産油国や天然ガスの開発に国民の税金を使うことについて、検討する余地があると思います。また、電源立地交付金として令和6年の予算の中で、奥州湖交流館管理事業交付金として440万円、漁業組合増殖事業への交付金として5728千円が充てられていますが、「電源立地」とは関係のない事業にお金が使われていることを見直しすることだと思います。何れにしましても、既に地球の平均気温が上昇し、そのことで生活環境が脅かされてきています。解決策はその場所や国に住む国民・住民が解決するしか方策はないと思っています。猛暑中と思いますが、良い御盆を迎えてください。

 

202483日 デンマーク、ウアンホイにて 

ケンジ ステファン スズキ