1. デンマークのエネルギー島建設構想について
2019年12月6日デンマークは世界の国々に先駆け、与野党間の間で地球温暖化防止に向けた政策として気候法(Klimalov)を議会で可決しました(参照:デンマークの地球温暖化防止対策)。
そして政策として2050年までにデンマークの地球温暖化ガスの排出量をプラスマイナスゼロとする目標にしています。この目標を達成するための行動計画の一つとして、2021年2月4日デンマーク政府与野党は*北海にエネルギー島を建設することを決めました。*全政党が推進した。
デンマークが決めた人工のエネルギー島の場所はユトランド半島西海岸から80㎞程離れた北海の海上です。計画では、工事費2110億クローネ(約3.6兆円)かけ、人工島を建設し、その周辺に設置された(される)洋上ウインドファーム*の電力をまとめ、また増設する。
増設計画では、第一工事の発電設備は300万世帯の電力消費量の発電が見込める設備量として300万kW(一基当たりの出力15MWの風車200基)を設置する。そしてさらに増設し最終的には1000万世帯の電力消費量にあたる発電設備1000万kW、(15MW×650基)を設置するという計画になっています。
人工島の完成予定は2033年と言われておりますが、この先具体的建設計画に向けた行動計画に期待したいと思っています。
*2021年2月現在デンマークの海域に設置した洋上ウインドファームの設備量は約170万kWで
詳細は以下の通りです。
デンマークの洋上ウインドファームのプロジェクト名と設置年そして基数と設備量
l Tunø Knob (1995) 10 møller, 5 MW
l Middelgrunden (2000) 20 møller, 40 MW
l Horns Rev I (2002) 80 møller, 160 MW 北海
l Rønland (2003) 8 møller, 17,2 MW
l Nysted (2003) 72 møller, 165,6 MW
l Samsø (2003) 10 møller, 23 MW
l Frederikshavn (2003) 3 møller, 7,6 MW
l Horns Rev II (2009) 91 møller, 209,3 MW 北海
l Avedøre Holme (2009/10) 3 møller, 10,8 MW
l Sprogø (2009) 7 møller, 21 MW
l Rødsand II (2010) 90 møller, 207 MW
l Anholt (2013) 111 møller, 399,6 MW
l Nissum Bredning forsøgsmøller (2018) 4 møller, 28 MW
l Horns Rev 3 (2019) 49 møller; 400 MW 北海
l 工事中Krigers Flak 605MW、(下記参照)
内、北海の洋上ウインドファーム計 約77万kW
下図はデンマークの系統連系図ですが、デンマークの電力供給では既にノルウェー、スウエーデン、ドイツ、オランダとの系統連系が出来ておりお互いに電力供給のやり取りをしています。そしてイギリスとの間には2023年の完成を目指したケーブル敷設工事中が始まっています*.
*プロジェクト名は”Viking Link”, 2014年デンマークのEnerginet とイギリスのNational Gridとの間で基本計画に合意し、その後各種の業務(ケーブルが通過するオランダ、ドイツ海域国の認可、海洋調査など)を得2020年から工事着工、総 距離770㎞(送電量HVDC ケーブル140万kW)でデンマーク側の工事負担額は約80億クローネ(約1400億円)と見込んでいる。
★エネルギー島建設場所:陸から80㎞沖合の北海海上、
総面積約120km2、洋上ウインドファームを含めた総面積約460㎞2
★Krigers Flak 工事中
設備量:約605MW
風車台数:72基(一基8.4MW) 起動予定年:2021
落札価格:発電量kWh 当たり37.2オーレ(約6.3円)
https://energinet.dk/
デンマークの電力・ガスなどエネルギー供給体制を管理しているのは、Klima, Energi og Forsynings 省の管轄下にあるEnerginet という役所です。この役所はデンマークの電力とガスの供給体制の管理を業務としています。職員数は約1250人(2021年1月現在)
Energinetは国内外の系統連系の整備も業務としており、デンマークの風力発電の増設に合わせ、欧州諸国との間で系統連系の補強事業を進めています。
インターネットEnerginetを検索しますと、デンマークの隣接国との電力供給状況が動画で見えます。
例えば:2021年2月6日午前11時30分デンマークの
電力はノルウェー、オランダ、スウエーデンに流れていることが解りました。
2.人工エネルギー島の建設費用について
人工島建設費用として見込まれている約2,110クローネを出資に関し、デンマークの企業組合*が投資することを検討しています。*企業組合のメンバーは年金基金組合のPension Danmark(注), PFA, エネルギー企業Andel それとコペンハーゲンインフラストラクチャー・パートナー(略称CIP)。
デンマークが建設計画を決めた北海のエネルギー島のイメージ図
総面積:約120㎞2 (12 ha.)この人工島周辺に650基約1,000万kWの洋上ウインドファームを設置する。
(出典:2021年2月5日、Energy Supply)
注:Pension Denmark、デンマーク最大の年金組合で労働組合と雇用者組合の共同経営、職員数は約300人です。年金加入者数は約75万人で加入者の職種は主に建設・土木、ホテル・レストラン、園芸、散髪となっています。
デンマークの2050年までに地球温暖化ガスの排出量をプラスマイナスゼロにするための行動計画の一つとして北海(デンマークの西側)にエネルぎー島を建設しその周辺に洋上ウインドファームの増設を決めたわけですが、これに先立ち、2020年11月デンマーク政府与野党間において東側のエネルギー島としてボーンホルム島(スカンジナビア半島の最南端、バルト海に所在する島)を指定しその海域に2百万kWの洋上ウインドファーム設置することを決めています。
東部エネルギー島に指定された
ボーンホルム島と洋上ウインドファーム
2GW(2百万kW)の設備配置図
島から20㎞沖合に計2GW
洋上ウインドファーム設置
起動年2024年予定
デンマーク政府与野党間で決めた、エネルぎー島建設構想によって洋上ウインドファーム建設のノウハウを所持するデンマーク国営企業Ørsted, 風力発電機メーカー、Vestas社や外資とは言えデンマークに所在するSiemens/Gamesaはこの先、大きな仕事が待ち構えているということが言えると思います。そしてまた、「風のがっこう便り2000」でも触れましたがこれらの工事に関与出来るエンジニアの育成が急がれるということが言えると思います*。
*設備量100万kW当たりの雇用数約9,000人を見込む。
3.日本における2050年に向けたゼロエミッション宣言への私見
地球温暖化防止に向け日本においても2050年に向けたゼロエミッションを宣言した県が多くみられます。この中には私(筆者)の生地岩手県も含まれています。どのような方策をもってゼロエミッションの目標を到達しようとしているのか、行動計画を見ていないので解りませんが、推察するに岩手県民の多大な努力がない限り目標達成は無理と見ています。理由は岩手県の年間の温室ガスの排出量は年間約1270万トン、この中で、二酸化炭素排出量1リット
ル当たり約2.5㎏を出す灯油の消費量では、全国で3番目に多く(注)、約3億2600万リットル消費しています。よって灯油消費による二酸化炭素の排出量は、これの2.5倍ですので、約8億7万㎏(87万トン)という計算になります。少なくともこの灯油消量を減らさない限り、30年後に温室ガスの排出量を実質ゼロにするには無理と思うからです。勿論私の推論が間違っていることを願っていますが、日本が京都議定で約束して地球温暖化ガス削減目標が守れていないことも含めての私見とさせて頂きました。(注)日本全国灯油消費量 88.5億リットル
灯油消費量の多い都道府県名(一人当たり)
① 青森県 466.36リットル
② 北海道 425.26 リットル
③ 岩手県 254.49 リットル×人口約128万人=3億2574万リットル
④ 秋田県 251.49 リットル
⑤ 山形県 203.05 リットル
(出典:インターネット)
デンマーク・ウアンホイにて
2021年2月10日